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社説

伊方原発差し止め却下 複合災害の認識足りない

 原子力防災上、格別に危険な場所に原発がある。そのリスクを考慮したとは思えない司法判断である。

     昨年再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について広島地裁は、住民らが運転差し止めを求めた仮処分申請を却下した。

     原発の沖合には国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走る。さらに四国では南海トラフ巨大地震の発生が懸念される。大地震と津波に原発事故が重なる複合災害が起きてもおかしくないところだ。

     しかし裁判所は、具体的危険によって住民の人格権が侵害される恐れがあるとはいえないと結論付けた。

     決定は、東京電力福島第1原発事故後に策定した新規制基準と原子力規制委員会の判断が合理的かを見極め、いずれも不合理でないと認定した。これは、九州電力川内原発1、2号機の再稼働を認めた福岡高裁宮崎支部決定に沿った判断である。

     原発の運転差し止めを求める仮処分申請が全国で相次いでいる。

     今回の決定はその状況を踏まえ、電力会社側にどの程度安全性を立証させるかが裁判所によって異なるのは望ましくないと述べた。その上で高裁段階で唯一確定している決定を参照すべきだという考えを示した。

     だが、過去の裁判例を引用して自ら判断するのを避けていては司法の役割を果たしたとは言い難い。

     審理では、地震の想定が過小だという指摘が住民側からあった。広島地裁は「慎重な検討を要する」と認めながら、地震学者らの証人尋問は正式裁判ですべきだと述べた。

     仮処分には迅速さが求められる。とはいえ、原発の危険性という重大な論点については積極的に検討すべきだったのではないか。

     伊方原発の最大の問題は、東西約40キロ、最小幅約800メートルの細長い佐田岬半島の付け根にあることだ。

     愛媛県などの避難計画では、半島の住民は車や船などを使って脱出するが、複合災害が起きれば陸路も海路も使えない事態が想定される。

     避難計画の策定は再稼働の条件ではなく、決定も判断を示さなかった。しかし、計画に実効性がなければ住民の安全が脅かされる。

     裁判所が運転を認めたとしても政府や電力会社は複合災害の対策を万全にする必要がある。

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