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「備え」は今

熊本地震1年/上 車中泊対策 行政、手探りの支援 官民連携で情報を提供

大勢の人たちが車中泊する「グランメッセ熊本」で車から降りて大きく伸びをする男性=熊本県益城町で2016年4月20日午前6時16分、久保玲撮影

 観測史上初めて最大震度7を2回記録し、強い余震が続いた熊本地震をきっかけに、全国の自治体が防災対策を変えた。熊本では建物倒壊を恐れて車中泊する避難者が続出し、行政は状況を把握できず、避難所外の被災者への食料などの物資配布や医療ケアが遅れた。車中泊者の総数など全容は今も不明だ。熊本地震から1年に合わせて毎日新聞は都道府県アンケートを実施した。その結果、熊本のケースを教訓に36道府県が車中泊対策を「見直した」か「見直し予定」と回答した。

     「支援物資も炊き出し情報も得られず、職場にあった食材でしのいだ」。熊本地震で熊本県益城(ましき)町の自宅が全壊し、約3週間、自宅敷地で車中泊をした障害者就労支援施設職員の山元慎一さん(46)が振り返る。

     車中泊は駐車場や公園などで相次いだ。益城町の県産業展示場・グランメッセ熊本の駐車場(2200台)だけで約1万人と推定された。一般社団法人・よか隊ネット熊本が地震から約1カ月間に同県内で車中泊者182人に実施した調査では、8割強が「行政から接触がなかった」と答えた。

     3月14日、徳島市のコンビニエンスストア「セブン-イレブン」。店員が店のコピー機で物資や医療、罹災(りさい)証明などの情報を印刷し、ガラス窓に張り出した。南海トラフ地震に備える徳島県とセブン&アイ・ホールディングス(東京)が実施した車中泊者らへの支援を目的とした初の実証実験。張ったのは市の支援情報で、セブン&アイを通じて送信した。

     夏には東京から輸送した物資を店舗で被災者へ配布する訓練も実施する。県担当課は「災害では『公助』だけでなく官民連携が重要になる」と語る。

     熊本県の調査で車中泊の実態が部分的に明らかになっている。県民アンケート(回答者3381人)では、避難者2297人のうち68%が「車の中に避難」と答え、理由は「余震が続き、車が安全と思った」が79%だった。命の問題でもある。狭い車内で長時間同じ姿勢でいると肺の血管をふさぐエコノミークラス症候群を引き起こす。同症候群で入院が必要と診断された54人のうち43人が車中泊を経験。震災関連死が62人の熊本市が毎日新聞に死因や経緯を開示した文書によると、うち少なくとも13人が車中泊をしていた。

     発生場所や人数が流動的な車中泊への対応は容易ではないが、国も対策を促し、各地で手探りが始まっている。埼玉県は同症候群を防ぐため、血流を促す弾性ストッキングの備蓄を今年度から開始。和歌山県は車中泊を原則禁止としていた避難所運営マニュアルの作成モデルを改定し、車中泊対策を盛り込んだ。三重県は避難所損壊の不安から発生する車中泊を防ぐため、被災した避難所の危険度調査の態勢強化を検討する。

     熊本地震で車中泊を調べた北九州市立大の稲月正教授(社会学)は「車中泊は自然な避難形態で、行政は防災計画に明確に位置づけるべきだ。車中泊者への情報提供の方法などを事前に決めておきたい」と語る。

        ◇

     熊本地震から14日で1年。熊本で50人が直接死し、関連死は熊本・大分で169人に上る。車中泊に加え、支援受け入れを巡る自治体の混乱や行政庁舎の損壊などの課題を浮き彫りにした。熊本地震を機に、この国の「備え」がどう変わろうとしているかを探った。(次回から社会面に掲載します)

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