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熊本地震復興へ 富田鉄工 “町工場魂”で再建

熊本地震の本震で工場の床に地割れが走り、約20センチの段差が生じた富田鉄工=同社提供.jpg
建て替えた工場の前で笑顔を見せる富田鉄工の富田恭司社長=熊本県嘉島町で、石田宗久撮影

 工場は大きく傾き、床には何本もの地割れが走り約20センチの段差ができていた。生産ラインの設計・製作を手がける富田鉄工(熊本県嘉島町)は従業員約20人の“町工場”だ。「これでは再建は無理。会社は閉じなければ……」。昨年4月16日の熊本地震本震がもたらした爪痕を前に富田恭司(やすし)社長(52)は立ち尽くした。【石田宗久】

     2日前の前震発生時、工場隣の事務所に残り、設計や見積もりの作業中だった。経験したことのない揺れに驚いた。仕事が立て込んでいたので早速、工場内の片付けや機械の精度調整などにとりかかった直後、再び大きな揺れが襲った。

     「会社に来ることができる人だけで」と従業員に連絡し、迎えた週明けの18日。だれもが大変な状況の中で、ほとんどの従業員が集まってくれた。「もうひと頑張りしなければ」と思い直した。「必ず立て直すから協力してくれ」。そんな言葉が自然と出ていた。

     同社は熊本南工業団地(敷地約18万平方メートル、24社)の一角にある。工業団地内のほとんどの工場も生産設備が壊れ、生産停止を強いられた。さらに、同工業団地協同組合で管理する共用施設の上下水道や道路、雨水排水管の被害も多数見つかった。水道は約1週間で仮復旧したが、多額の修繕費は各社の分担となる恐れがあった。

     協同組合の理事長も務める富田社長は自社の復旧を目指すと同時に、熊本県や県中小企業団体中央会などに工業団地の被害の状況を訴え、支援制度の情報収集や陳情に奔走した。その結果、国と県が復旧費の最大4分の3を負担する「グループ補助金」に同工業団地の復興事業計画が採択。修繕費は総額3億円に上ったが「負担はかなり抑えられた」。

     一方、県内の中小企業で「熊本から仕事がなくなるのが怖い」「早く復旧しないと仕事が戻らなくなる」と不安や焦りの声が広がっていた。生産拠点が被災した大手企業が一時、生産を他地域の工場などへ移したからだ。

     富田鉄工の取引先は同様に被災したアイシン九州(熊本市)や、地元大手企業に産業用ロボットを納める安川電機グループの安川エンジニアリング(北九州市)などだった。生産再開に向けた準備を進める両社から「仕事を出したい」と声が掛かった。日ごろの信頼関係が生きていた。富田社長は「いただける仕事は全部受けます」と感謝した。

     今年1月、富田鉄工の被災工場跡横に真新しい工場が完成した。3億円を投じて建て替え、生産水準は被災前の9割まで回復した。高精度で穴開け加工できる大型工作機械の移設作業が進んでいる。同工業団地の全工場もほぼ再建を果たし、生産は地震前と変わらぬ程度に回復しつつある。

     「たとえ小さくても、私たちが大手メーカーの生産を支えている自負はある」と富田社長。「あと一歩で完全復旧する。きちんとした仕事をして地元に恩返ししたい」。胸に秘めた熱い“町工場魂”は無傷だ。


    富田鉄工

     1967年設立。メーカーの生産ラインで各種設備を独自設計、製作している。アイシン精機のトヨタ自動車向けドアフレーム溶接設備や、ホンダ向けの産業用ロボット関連設備を担っている。従業員は約20人。売上高は約2億円。

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