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爪痕に生きる

熊本地震1年/2 進まぬ自宅再建 資材高騰、阻む夢

 屋根瓦があちこちではがれ落ち、雨水にさらされた屋内にはカビ臭さが漂う。築250年の木造家屋には愛着があった。その姿を2度の激震が変えた。「壊したくなかけど、解体せんと次に進めんけんね」。熊本県益城(ましき)町の米農家、坂井謙二さん(65)は全壊認定の自宅を見上げた。

     ところが、公費解体は早くても10月ごろ。私費で取り壊すにも蓄えがない。先祖代々継いだ田んぼの底も地震で波を打ったように変形し、昨年の収穫量は例年の4分の1程度まで減った。崩れた自宅前でぼんやりと座り込む日も続いた。

     解体後も、敷地に入った亀裂で建築許可が下りるかどうか分からない。田んぼが復旧しないと資金のめども立たない。狭い仮設暮らしで腰痛が悪化し「早く家を建ててここを出たい」と漏らす妻寛美さん(68)のことが気になる。「壊すと決めた以上は前を向くしかないけん」。坂井さんは自分に言い聞かせた。

     震度7が2度も襲った熊本地震は、建物被害が甚大だった。熊本県によると、解体を申請している全半壊家屋は被災27市町村で3万3554棟と見込まれ、3月末の進捗(しんちょく)率は約6割。来年3月までにすべて終える予定だが、まだ約1万3000棟が解体を待っている。

     思い出が詰まった自宅の解体に踏み切れず、申請遅れで再建が進まない被災者もいる。

     約2900世帯が液状化被害に遭った熊本市では、林田エミ子さん(78)が洋風の自宅に縁側から出入りしていた。地盤沈下で家全体が波打ったようにゆがみ、玄関は開かない。

     昨年9月、79歳だった夫栄次さんをがんで亡くした。夫と過ごした家を離れたくない一心で傾いた全壊の家に住み続けたが、市の解体申請期限が迫った3月末、やむなく解体を選んだ。「本当は壊したくなか。ずっとこの家にいたい」。今は後ろ髪を引かれる思いでその日を待つ。

     解体工事の長期化は被災者の自宅再建を一層難しくしている。自宅が全壊し、益城町の仮設住宅に入る増田敏一さん(66)は昨年6月、熊本市の住宅メーカーから「今なら20坪850万円」と言われた。しかし、復旧工事の本格化や東京五輪に向けた建設需要の高まりで資材が高騰。業者不足も深刻化し、今年1月に同じメーカーから1200万円近い価格を示され仰天した。

     他のメーカーに相談すると「今注文を受けても完成は2~3年後になる。その間にも価格は上がる」と言われた。17日からやっと解体が始まるが、その後の見通しは立たない。「これ以上高騰すれば手が届かんごとなる」。日を追うごとに自宅再建の夢が遠のく。=つづく

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