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社説

製薬会社からの資金提供 新法を不正抑止の契機に

 薬の効果を調べる臨床研究で、データ監視や情報公開などの実施手続きを定めた臨床研究法が成立した。

     製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の研究データ改ざん事件などで浮き彫りになった製薬会社と医師らとの癒着をただし、臨床研究を適正化する狙いがある。地に落ちた日本の臨床研究の信頼回復と質の向上に向けた契機としたい。

     同法では、製薬会社から提供された資金を使った臨床研究や、国の未承認薬で行う臨床研究を「特定臨床研究」と規定し、製薬会社に資金提供などの情報公開を義務づけた。

     研究を実施する大学などは、研究計画を策定し、国の認定を受けた第三者機関の審査を受けなければならない。カルテの記述と研究データが一致するかの確認義務も負う。

     国は研究の改善や中止を命令できる。違反は最高で懲役3年、罰金300万円が科せられる。

     臨床研究の中でも、新薬の製造や販売の承認を受けるための治験は、医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制されていた。しかし、薬の販売開始後に、脳卒中予防など副次的な効果を調べたバルサルタンの臨床研究のような場合は、対象外だった。

     臨床研究法成立で、臨床研究不正を抑止する効果が期待できる。ただ、それだけで臨床研究の質が高まるわけではない。第三者機関の体制整備や研究データを解析する専門家の育成、研究者に対する倫理教育の強化など、政府や医学界が取り組むべき課題は山積している。

     臨床研究法制定のきっかけとなったバルサルタン事件では、元社員が医薬品医療機器法違反(虚偽記述・広告)に問われた。東京地裁は先月の判決で、元社員が論文用データを意図的に改ざんし、論文が販売促進に使われたことを認めた。にもかかわらず、論文は広告に当たらないとして、元社員に無罪を言い渡した。東京地検は控訴している。

     臨床研究法で、すべての臨床研究に網がかかるわけではない。意図的な改ざんデータを含む論文が罪にならないのであれば、新たな不正の抜け道ができる恐れもあるだろう。

     今後、規制対象の見直しや、米国で認められている製薬会社への巨額な制裁金制度も検討されていい。

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