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爪痕に生きる

熊本地震1年/3 学習環境、復旧の途上 不便さ、成長後押し

 東の空が明るみ、阿蘇の山並みが浮かび上がる。熊本県南阿蘇村の高校2年生、高松実姫(みき)さん(16)は他の高校生たちとバスを待っていた。これから熊本市内の高校までバスと電車を乗り継ぐ。約2時間かけた通学だ。

     かつては南阿蘇鉄道の最寄り駅から約1時間で高校だった。しかし、南阿蘇鉄道は熊本地震で全線復旧の見通しが立たない。代替バスで電車に乗れるJRの駅に行くだけで約1時間かかる。一時は午前4時半に起きた。道路が復旧し今は5時起床で何とか間に合う。だが、吹奏楽部の練習を終えて午後9時ごろに帰宅する毎日を考えると、やはり早い。

     「私よりお母さんが大変。もっと早く起きてお弁当とか作ってくれてるから」。車で送ってくれた母礼子さん(52)に手を振り、バスに乗り込んだ。「朝はこの便だけ。『乗り遅れるよ!』って毎日が戦争」と礼子さんは苦笑した。帰りは部活で遅いため、JRの駅まで車で迎えに行く。

     帰宅して夕食やお風呂、宿題などを終えると、午前0時を過ぎてしまう。寝不足から授業中うとうとすることがある。「私だけがきついんじゃない。今頑張れば、きっと成長できる」。地震で生活が一変したのは周りも同じ。とにかく前を向くしかないと気を張る。

     学校施設の復旧の遅れも、子供たちに大きな影を落とす。地震では熊本県内の公立小中333校が被災し、3月末時点でも9市町の計17校が校舎や体育館を使えない。

     体育館の建て替えが決まっている熊本市東区の錦ケ丘中は、バドミントン部やバスケットボール部などが、練習場所を求めて近隣の小中学校を転々としている。他校の部活動が終わってからの練習は午後6時半から1時間程度だ。帰宅は毎日夜になってしまう。

     バドミントン部主将の熊谷翔さん(14)は「もっと練習したいけど、量より質を大事にしながらやっていくしかない」。練習後は迎えに来た親の車に飛び乗り、車中で夕食をかき込んで塾に駆け込む日々が続く。

         ◇

     「行ってきます」。県内で唯一、校庭に仮設住宅が建つ益城町立飯野小。新6年生の岡本力輝(りき)さん(11)は始業式の10日朝、仮設を元気に飛び出した。

     自宅が全壊した力輝さんは、父と祖父母の4人で暮らす。仮設が狭く、母と小2の妹は熊本市内のアパートに移り、家族は離ればなれになった。優しく声をかけてくれる仮設の人たちが、寂しさを紛らわせてくれる。

     「皆でいい1年にして、涙を流せる卒業式にしよう」。担任の清原琢史教諭(27)の言葉に、大きな声で「はい」と応えた。「中学に向けて勉強を頑張る。将来は復興の手伝いをしたい」。新しい1年が始まった。=つづく

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