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熊本地震1年/4 山に亀裂、帰れない

 3日連続の雨が降っている。熊本県南阿蘇村の会社員、猿山正弘さん(53)は、心配そうに自宅の裏山を見上げた。熊本地震で数百メートル離れた山肌が大規模に崩れ、3人の命と阿蘇大橋をのみ込んだ。昨年6月の豪雨でも崩落し、無数の亀裂が走ったままだ。「いつ崩れてもおかしくない」

     村は地震直後から猿山さんらが住む立野地区に避難勧告を発令した。阿蘇大橋が崩落したため、地区は村役場がある村中心部から隔絶され、水道復旧の見通しも立たない。昨年10月には全357世帯が被災者生活再建支援法の長期避難世帯に認定された。

     菊陽町に避難した猿山さんは毎週末、みなし仮設のアパートから片付けのために自宅に帰る。放置し続けた室内はかび臭く、変色していく壁のクロスを見るとため息が出る。まだ15年分のローンが残っているが「山を背に命懸けで住むわけにもいかない」と悩む。長期避難世帯は最大300万円の支援金を受けることができるが、それでも生活再建への道は険しい。

     村は避難解除の要件として、裏山の安全確保▽村中心部との隔絶の解消▽水道復旧--の三つを挙げる。国は阿蘇大橋の開通時期を2020年度と見込んでおり、村中心部との隔絶は4年以内に解消できる見通しだが、最大の障壁は裏山からどう命を守るかだ。

     熊本県は今年度、裏山の3カ所に砂防ダムを建設するなど対策工事に乗り出すが、県砂防課は「ハード事業だけで危険を取り除くのは難しい」。早めの避難など住民側の努力も暗に求める。だが、地区の男性(63)は表情を曇らせる。「ちょっとした雨のたびに避難していたら生活にならん。帰ることができても心配がつきまとう」

     県内では御船町の町営中原団地など109世帯307人と、宇土市花園台、神馬(しんめ)両町の13世帯42人も長期避難世帯になっている。

     「中原団地が最後の住み家と思っとった。骨をうずめようと」。御船町の南木倉仮設団地に避難する木村和民(かずたみ)さん(68)は何度も涙を拭った。高台に位置する中原団地は地震で敷地全体が地滑りする恐れが高まり、昨年6月に認定された。

     木村さんは約40年住んだ近くの町営団地が古くなったため、地震の半年前に中原団地に移ってきたばかりだった。「こんなことになって妻と長女に申し訳なか。いつまで避難が続くとだろか」。自分を責める毎日が続く。

     同じ仮設団地にいる古閑忠正さん(67)も「1、2カ月で戻れると思ったが」といら立ちを隠せない。結婚を機に中原団地に来て四半世紀。数年前に仕事をリタイアし、このまま悠々自適に過ごすつもりだった。「とにかく早く戻りたい」。長期避難は、夢見た穏やかな余生にも大きな影を落とす。=つづく

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