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熊本地震1年/5止 住まい再建、それぞれの道 地区、出るか残るか

 更地に菜の花が揺れていた。熊本地震でほとんどの住宅が全壊した熊本県西原村の大切畑(おおぎりはた)地区。26世帯の住民の大半が仮設住宅などに避難し、家屋の解体も進む。日ごろは閑散とした地区に、地震から1年の14日、久しぶりに人々の笑い声が響いた。地震後から交流が続く新潟県中越地震(2004年)の被災者らが訪れ、桜の苗木を植えてくれた。笑顔の輪の中で、区長の坂田哲也さん(60)は希望に胸を膨らませた。

     布田川(ふたがわ)断層帯の真上に位置する西原村では村全体の55%にあたる1370棟が全半壊。あまりの被害の大きさに村内6地区で一時、国の防災集団移転促進事業、いわゆる「集団移転」を模索する声が上がった。大切畑もその一つ。昨夏、村が全住民に実施した意向調査で「地元に残る」と答えたのは坂田さんら2人だった。

     離れる選択をした人も葛藤を抱える。「家族の気持ちを思えば仕方がない」。仮設住宅で暮らす会社役員の山口誠一さん(43)はつぶやいた。昨年4月16日の本震直後、激しく傾いた自宅の外で長女(10)と次女(4)は震えていた。その後も自宅跡に近づくと「早く帰ろう」と怖がった。間もなく役場近くの中心部で新居の建築が始まる。「どこに住むのが正解か分からん。ただ今は、子供が新しい家を楽しみにしているのがうれしい」

     震度7に2度襲われた最激震地、益城(ましき)町の杉堂地区でも一時、住民から集団移転の相談が町に相次いだ。地区の6割(約50戸)が全壊。集団移転か、個別移転か、残るか。世帯それぞれで事情や思いが分かれる。復興を話し合う地区の勉強会に顔を出さない人が出るなど、住民間に見えない距離ができた。

     「一人一人に悩みがあることは承知しているが、一番住みよい杉堂をつくるため意見を出してほしい」。3月21日、住民の多くが避難する町内の仮設団地であった「まちづくり協議会」設立総会で、会長に推された森川恭一さん(75)が約40人に語りかけた。すべての住民に参加してもらえるように集団移転も否定せず、住まいや地域の再建を目指したあらゆる方策の検討が始まった。古里が姿を変えて1年。惑い続けた住民らがようやく再出発を切った。

         ◇

     地元に残りたいと願う人がほとんどいなかった大切畑地区。坂田さんらは、避難する住民らが安心して戻れるよう、村と20回を超える話し合いを重ねた。その熱意に村も地区内の道路整備案や宅地造成案を提示。今では半数の13世帯が地元に残る意向を示している。

     「復興とともに成長した桜の下で、住民みんなで花見をするのが夢です」。坂田さんがほほ笑んだ。新潟県の旧山古志村の住民らが届けてくれた桜の苗木は10本。その小さな葉が、風に揺れた。=おわり(この連載は佐野格、金森崇之、山下俊輔、吉川雄策、取違剛が担当しました)

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