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余録

古代ギリシャのソフィストは…

 古代ギリシャのソフィストは、ああいえばこういう連中だった。絶対に負けない弁論術を教え、もし裁判で負ければ授業料は返すという弁護士教室。そこで課程を終えた弟子が先生を訴え、授業料の返還を求めた▲「裁判で自分が勝てば判決で授業料は戻るし、負ければ約束通り授業料は返還される」。こう言う弟子に先生は反論した。「もしおまえが負ければ判決によって授業料は返さなくていいし、おまえが勝てば授業料は返さない約束だ」▲三浦俊彦(みうらとしひこ)著「論理サバイバル」から話を借りたが、さて裁判長はどちらに軍配を上げるか。言うことはどちらも「正しい」が、請求を両立させることはできない。ところが現実の裁判で正反対の請求が両立してしまったらどうなるのか▲諫早(いさはや)湾干拓でギロチンと呼ばれた潮受け堤防閉め切りから今月で20年となった。おりしも先日、干拓地の営農者が求める堤防の開門差し止めを命じた長崎地裁判決があった。7年前に開門調査を命じた福岡高裁判決と逆の判断である▲すでに確定した高裁判決による開門調査を求める有明海の漁業者は国に控訴を要求している。真っ向から対立する農民と漁民の利害を背景に、ねじれ状態となった司法の判断である。開門しないことによる国の制裁金の支払いも続く▲止められぬ公共事業と環境破壊を心に焼きつけたギロチンの光景だった。海を断ち切った鋼板はその20年後も人々の生業と暮らしを分断し、司法をも迷路に追い込んだ。政治はどこで何をしてきたのか。

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