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社説

袋小路の諫早湾干拓事業 国は事態の打開に動け

 国営諫早(いさはや)湾干拓事業をめぐり、長崎地裁が今週、潮受け堤防の排水門を開くのを禁じる判決を出した。開門による塩害を心配する干拓地の農家らが国を相手に訴えていた。

     諫早湾が全長7キロの堤防で閉め切られて、今月でちょうど20年。この間、開門による環境調査を求める漁業者の訴えが裁判で認められ、7年前に確定している。今回の長崎地裁判決で相反する司法判断が生じ、問題は「袋小路」に陥っている。

     2500億円以上をかけた干拓事業の狙いは、戦後の食糧難を解消するコメ増産策だった。その後、企業誘致や防災なども目的に加わった。必要性が乏しいのに見直さず、強行したツケがまわってきたと言える。

     海流の変化でノリなどの不漁を訴える漁業者も、塩害などを心配する干拓地の農家にも非はない。どちらにも地域に根ざした生活がある。国策に振り回され、無益な対立に追い込まれた犠牲者だ。

     しかも、いまだに税金が垂れ流しにされている。漁業者、農家の双方の申し立てに伴い、国は開門してもしなくても、日々制裁金を払わねばならないからだ。その総額はまもなく8億円を超える。

     解決の糸口は一時見えかけた。

     判決を前に、長崎地裁は和解の道を探った。その過程で国は開門しない代わりに、100億円の基金創設案を示している。沿岸4県で有明海再生に向けて基金を活用してもらう構想だった。だが、「話し合いには開門の議論が欠かせない」とする佐賀県の反対で不調に終わった。

     今一度、関係者が打開に向けて協議すべきだ。

     排水門を5年間開いて環境への影響を調査するように命じた判決が確定している以上、「開門しない」を前提にした案は道理にあわない。専門的な知識を得て、塩害を抑えて影響を最小限にとどめる開門方法を見いだす努力が不可欠である。

     堤防建設の正しさに固執し開門したくない国は、長崎地裁の審理で十分に反論せず、わざと敗訴に持ち込むような姿勢だった。そうした対応は疑念を呼んで問題をこじらせる。

     今日の事態を招いた責任は国にある。関係者が折り合える点を模索するうえでも、これまでにない発想での決断が求められる。

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