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伝えたい

那須雪崩事故/11止 教訓後世へ 長野の教諭・西牧岳哉さん(52) /栃木

栃木の事故について話し合う西牧さん(右端)ら28年前の雪崩事故の裁判を支援したメンバーら=長野県松本市で

親友の死、生かされず 登山専門部一任、再考を

 28年前の3月、長野県白馬村のスキー場近くで、親友だった高校教諭の酒井耕(こう)君(当時24歳)が雪崩に巻き込まれ、亡くなりました。私は事故の原因究明が不可欠だと感じ、何度も現場に足を運び、検証活動を支援してきました。

     事故の再発防止を願ってきましたが、今回の栃木と長野の事故はあまりにも類似点が多い。教訓が生かされず、怒りが込み上げました。「またか」と。

     栃木も長野も、行政側が主催した講習会や研修会中に事故が起きましたが、類似点はいくつもあります。天候の悪化により当日に訓練内容を変更したこと、(ラッセルのように雪をかき分けて進む)輪かんじき訓練を5班に分かれて行ったこと、ベテランとされる顧問教諭が講師を務めたこと、スキー場近くで事故が起きたこと、前日から一気に雪が積もって表層雪崩が起きたこと、3月の開催だったこと……。

     亡くなった酒井君は雪山の素人で、「講師」ではなく生徒と同じ「参加者」の扱いでした。「ベテランの先生たちがついているから大丈夫だよ」と母親に言って出かけた酒井君が、なぜ死ななければならなかったのか。

     母親は事故の翌年、長野県を相手取り、裁判を起こしました。私も裁判を支援する会のメンバーとして活動しました。裁判では、横一列に並んで行った輪かんじき訓練が雪崩を誘発したことなどが認められ、原告側が勝訴しました。闘いは約5年に及びましたが、関係者は「絶対に繰り返してほしくない」という強い気持ちでした。

     この裁判では、安全を確保する必要があったという点で、「登山」ではなく「研修会」中の事故だったこともポイントになりました。栃木の事故は県高体連登山専門部が主催した講習会中に発生しました。安全を確保する必要があったのに、あんなに上方の斜面を登るとは、訓練の域を超えていたと思います。

     長野と栃木の事故では、講師を務めた教諭が「生徒にいろいろな体験をさせたい」という思いから、訓練の実施を決めたとみられています。雪上訓練のために新雪を求め、安全よりも、生徒の気持ちを優先してしまったのでしょう。

     登山部は他の部活に比べて特殊です。全国大会で筆記試験がある運動部が、他にあるでしょうか。それだけ専門性が高い分、高体連は登山専門部に一任しすぎている面があると感じます。従来の組織形態を考え直すべきではないかと思います。

     栃木と長野の事故は、ほぼ同じような状況下で起きました。酒井君の事故が全国的にも知れ渡っているかと思いきや、栃木の事故が報道されても、全く28年前の話は出ませんでした。長野の教訓を全国に伝える必要性を感じますし、同じ事故を二度と繰り返さないでほしい。【聞き手・野口麗子】=おわり


     ■人物略歴

    にしまき・たけや

     1989年3月、長野県白馬村の北アルプス・遠見尾根であった雪崩事故で親友の教諭が犠牲となり、事故の再発防止を求めて活動した。現在は長野県の公立高で山岳部顧問を務めている。

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