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余録

「労働生産性」という言葉を…

 「労働生産性」という言葉をよく目にする。労働力不足が深刻化し、長時間の残業をやめようという機運が高まっている昨今である。より短い時間に大きな成果を生むことは企業にとって死活問題だ▲ただ、効率だけでは生まれないものもある。ビジネスと芸術は違うが、たった一つの作品に30年以上かけた作家がいる。東健次さんは「虹の泉」という作品に半生をささげた人である▲24歳のころ訪れたスリランカで、巨大な古代遺跡と出合ったのがきっかけだった。1978年、故郷の三重県松阪市飯高町でアトリエと窯を作った。2020枚の陶板を張り付けた大壁画を制作し、周囲に大小の陶芸作品を並べていった▲5800平方メートルの広大な土地を自らの作品で埋め尽くすことに執念を燃やした。「その時の流行と経済的営利を優先させる芸術文化の破壊者たちの暴力が近づかない空間にしなければいけない」。東さんは「虹の泉」を説明した冊子にそう書いた▲長年の夢が実現に近づいた2013年5月、東さんは急逝する。残された仕事は妻と娘が引き継いだ。作品の据え付け作業を何年も続け、昨年10月「虹の泉」は未完の作品として完結した。「世界に類のない芸術の冒険」と注目されている▲「虹の泉は人の良心への賛歌であり、この暗い時代の中を善良な魂を失うことなく生きている人々に捧(ささ)げる花束でありたいと願っています」。生産性や効率とは正反対の人生を歩んだ東さんの言葉である。7日まで一般公開されている。

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