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余録

昔、土佐の国で野火があって…

 昔、土佐の国で野火があって無住の寺が焼けそうになった時、一人の小僧が現れて村人に火事を告げて回った。村人が駆けつけると、寺は一部が焦げただけで、堂の前には寺の地蔵菩薩(じぞうぼさつ)と毘沙門天(びしゃもんてん)像が立っていた▲「今昔物語(こんじゃくものがたり)」の話である。村人は地蔵菩薩と毘沙門天が自ら堂を出て、毘沙門天が火を消し、地蔵が小僧に変身して村人を呼び集めたのだと語り合った。霊験あらたかなことが世に広まり、人里離れた寺に詣でる人が相次いだようだ▲寺を救った火伏(ひぶ)せの霊験にすがりたくなるような岩手、宮城、福島の各県での山火事の続発である。山林から燃え広がった火で住宅にも被害が生じ、近隣住民が避難を迫られた。東北地方の太平洋側はこの間、乾燥状態が続いていた▲「桜が咲いたら山火事に注意」。林業に携わる人々の間の警句という。気象エッセイストの倉嶋厚(くらしまあつし)さんによると、フェーン現象などによる強風、乾燥などに加え、人がレジャーや林業作業で山に入り火を使う春は山火事の季節という▲東北地方ではちょうど今ごろで、今度もたき火などが原因らしい。そして強風や乾燥といえば、実は建物火災でも春は冬に劣らず例年火事の多い季節のようだ。6人が亡くなった北九州のアパート火災も強風注意報の中の惨事だった▲建物は実際は簡易宿泊所代わりに使われながら、宿泊所に必要な防火対策がなされていなかったという。春の火魔を招きよせる人の過怠(かたい)、不行き届きは人の手によってしっかりと封じ込めねばならない。

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