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第7回 女の自立=室井佑月

 安倍晋三首相が「女性が輝く社会」と謳いだしてから、専業主婦への風当たりが強くなったような気がする。女も自立すべきだ、女も外に出て働くべきだ、という声が増えた?

     女も自立すべきだ、という意見には大賛成だ。しかし、女も外に出て働くべきだという意見には、そこまでいうか!と思ってしまう。

    「女性が輝く社会」という言葉が、わかりづらいのがいけない。安倍首相はほんとうのことをはっきりというべきだった。

     この国は少子高齢化が進み、労働力が足りない。家にいる潜在能力の高い女たちよ、国のために力を貸してくれないか、と。そうしてくれれば、税収も増え、嬉しいんですけど、って。

     まず、はじめにそれをいって欲しかった。

     だって、10年くらい前には、「子どもが小さいときくらい、母親は家にいられないものか」といった論調が主流だったのだ。

     労働力が足りないから、じゃ、女を投入。手を貸してください、というお願いじゃなく、女も社会に出て輝くべきだ、という上から目線の提言ってどうよ? すっごく馬鹿にされた気がするのは、あたしだけかな?

     もちろん、国はそのために「男性優位の雇用環境の改善」や「男女役割分担意識の変革」、「シングルマザーや非正規雇用の女性を支援」を行っていくといっているけれど。それって、人はみな平等といった当たり前であることが、これまで当たり前に行われていなかったという証左でもあるんだよね。

     そんな世の中だからこそ、あたしは女の自立が大切なのだと思う。自立っていうのは、外に出て稼いでくることじゃない。心や体が誰にも支配されず、自分のものであるということだと思う。

     誰かに命じられ、自分の人生を決めるのではなく、女も自分の思うままに自由に生きていい。誰かというか、女の場合の圧力は、世間体というものだったりするのか。

     でも、世間の価値観なんてコロコロ変わる。今は女も働くのが当たり前といわれているけど、昔は女は家にいて子守しろ、だったんだから。

     そんなコロコロ変わる世間体に付き合うのは馬鹿らしいじゃん。女とか男とかざっくりしたジャンルで合わせようとせず、唯一無二の自分の生き方を模索するのが楽しい人生だと思う。

     たとえば子どものいる女には、仕事をしている女と専業主婦がいる。仕事をしている女で夫がいる人をAとし、シングルマザーをBとする。専業主婦をCとする。

     この情報だけ聞いて、どのタイプがいちばん幸せかなんて、わかるはずがない。

     だが、そこにあたしがいう自立というものを付け加えれば、かなり見えてくるものもある。

      外に出て働いているのは、AとB。仕事が好きで働いているのか、生活費を稼ぐために働いているのかはわからない。でも、誰かに強いられてそうしているというのではなく、私はこれで生きていくんだ、という自分があれば、幸せなんてちょこちょこ見つかる。

     会社の中でポストを上げたり、私がこの家を支えているんだという満足感であったり、給料日に自分で自分へのご褒美を気兼ねなく買えることであったり。

     一方、専業主婦だって同じだ。良い夫か、そうでないかはわからない。けれど、私がその生き方を選んだんだ、と胸を張れるかどうかによって、かなり幸せ度は違ってくるように思う。私が家族の健康や生活を支えているんだ、私がいなければこの家族は成り立たないのだ、そう感じられる人は幸せだ。

     補足として、生活保護に頼っている人のことも付け加える。生活保護者は世間から叩かれがちだが、国民の権利としてその制度があるのだから、堂々と貰えばいい。彼女たちは、自立していないのだろうか?

     あたしは違うと思う。とりあえずこれで生きていこう、そう考え、国の制度に頼った彼女たちは、ある意味、自立しているんだと思う。

     愛してもいない男に嫌々、体を開き、そうしないと生きていけないからなどと考え、ため息の毎日を送っている女のほうが自立していないんだと思う。あたしの解釈からすればそうだ。

     女の幸せは、『自立』がキーワードかも。

     でも、他人になにかを頼まれたりして困ったときには、

    「お父さんに聞いてみないと。私はなんにも決められないのよ」

     という便利な言葉を覚えておこう。それが使えるのは、女だけ。

    室井佑月

    1970年、青森県生まれ。雑誌モデル、銀座・高級クラブでのホステスなどを経て、1997年に「小説新潮」主催「読者による『性の小説』」に入選し、作家デビュー。小説家、随筆家、タレントとして多岐にわたり活動している。2000年に第一子となる男児を出産。2016年には、一人息子の中学受験と子育てについて愛と葛藤の8年間を赤裸々に綴ったエッセー『息子ってヤツは』(毎日新聞出版)を上梓。主な著書に『熱帯植物園』(新潮社)、『血い花』(集英社)、『子作り爆裂伝』(飛鳥新社)、『ママの神様』(講談社)などがある。

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