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余録

歌人の河野裕子さんが…

 歌人の河野裕子(かわのゆうこ)さんが娘の結婚式に臨んだのは自分ががんで亡くなる4カ月前のこと。<この子には着物を残してやれるのみ婚の準備のひとつもし得ず>。健康であれば新婚生活に必要な物を一緒に買いに行ってあげられるのに。母として娘に済まなく思う▲夫で歌人の永田和宏さんの著書「人生の節目で読んでほしい短歌」に収められている。母親と言えば、この人はどんな思いで歳月を重ねてきたのだろう。横田早紀江(よこたさきえ)さん。長女めぐみさんが13歳の時に北朝鮮に拉致されてから今年で40年になる▲早紀江さんはめぐみさんが北朝鮮で出産後、同じ拉致被害者の蓮池祐木子(はすいけゆきこ)さんに育児を教わっていたと聞く。「娘には家事や子育てなど何も教えられなかったからずいぶん苦労したのでは……」。著書「めぐみと私の35年」にある▲めぐみさんも母親のぬくもりをどれほど思い出したことか。同書には帰国した拉致被害者から伝えられた様子が記されている。こう話したことがあるという。「私のお母さんはね、いつも香水をつけていて、とってもいい匂いがするんだよ」。別れた時のお母さんのままなのだ▲早紀江さんは娘がいなくなってから短歌を作るようになった。めぐみさんが修学旅行のお土産に買ってきたサボテンが花をつけた時の作品がある。<消えし子よ残せるサボテン花咲けりかく小さくも生きよと願う>▲わが子を奪われた母親の慟哭(どうこく)は続く。朝鮮半島の緊張が続く中でも、その声がかき消されてはならない。きょうは母の日。

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