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余録

今ごろ新緑の野山を歩けばクリやクヌギなどの葉が…

 今ごろ新緑の野山を歩けばクリやクヌギなどの葉が筒状に丸まって地面に落ちている。昔の人は「ホトトギスの落とし文」と呼んだ。中には虫の卵が産みつけられているが、その虫の名前もオトシブミである▲体長1センチほどのこの甲虫は葉を丸めた「ゆりかご」の中に産卵する。ゆりかごは湿った地面に切り落とされ、孵化(ふか)した幼虫はその葉を食べて成長する。昔の人はこの葉の丸まったさまを巻き文に見たて、初夏の便りになぞらえたのだ▲この「落とし文」、昔は人目にふれるようわざと道に落としておいた匿名の告発や脅迫文を指した。今でいう怪文書である。告発されるのは悪代官や悪徳商人というのが相場だった。では官房長官が怪文書扱いをしたこれは何だろう▲「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」--内閣府が文部科学省に某大学の獣医学部の早期開設をこう促したという文書である。学校法人の理事長は首相の友人で、文科省は早期認可に難色を示していた▲文科省内の記録といわれるこの文書だが、首相はかねて学部開設に自らが関与していたら「責任をとる」と言っていた。野党が追及へ勢いづいたのは当然で、まずは政府が早急に文書の正体と政策決定のプロセスを説明すべきだろう▲「かの人の癖(くせ)の文字かも落し文 鈴木真砂女(すずきまさじょ)」。昔はひそやかな恋心を伝える落とし文もあったらしい。ひそやかな「ご意向」のごり押しをつづった文科省の落とし文は、国会で真偽を検証せねばなるまい。

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