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紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。
<5月12日>
■首相改憲発言 9条3項への疑問と中身は?
安倍晋三首相は憲法記念日の5月3日、憲法改正推進派の民間団体が東京都内で開いた集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せた。メッセージは(1)2020年を新憲法が施行される年にしたい(2)憲法9条で、戦争放棄をうたった1項と戦力不保持を定めた2項を堅持した上で自衛隊の存在を明記する条文を加える(3)新憲法に高等教育までの教育無償化を明記する――といった内容だ。安倍首相が明らかにした憲法9条への「加憲」論。1、2項をそのままで自衛隊の存在を明記するという手法には矛盾があるとの主張が高まってきている。10日朝刊1面<「自衛隊」加え新改憲案>では、首相が自民党に対して、1、2項維持で、自衛隊の存在を明記した新たな改憲案の策定を指示した旨を報じた。安倍首相は「憲法学者の7、8割が自衛隊を違憲だと言っている」と主張し、3項を加えることで違憲を解消できると考えているようだ。だとしたら、どんな内容の3項が考えられるのか。首相が具体的に言及していないだけに、考えられる3項の条文を読んでみたい気になる。2項との矛盾なく、条文を定めることができるのか、できないのかといった疑問を解消する記事を読んでみたい。11日朝刊内政面の<自衛隊明記に課題多く>で書いてはいるが、専門家の突っ込んだ見解も示してほしい。
司会 これは政治部と社会部に聞きますが、まず政治部。
政治部副部長 安倍首相はビデオメッセージで9条3項とは言っていない。1項と2項は変えないが自衛隊の存在を明記すると言っている。翌週の国会答弁で初めて3項という言葉を使った。1項、2項、3項となるのか、別の形があるのかわからない。政府の当局者などを取材しているが、整合性のある条文になるのかという抜本的な問題もある。憲法学者なども取材して問題点を書いていきたい。
司会 社会部は。
社会部長 社会部も憲法9条の問題に関わっている。これが9条改憲のスタートなので、憲法学者に聞くなどして考えていきたい。
□今村復興相辞任 「#東北でよかった」は反応良かった
今村雅弘復興相の辞任を受けた4月26日夕刊社会面で、<「#東北でよかった」逆手に自慢>との囲み記事が掲載された。ツイッター上で復興相の失言を逆手に取り、生まれや育ちが「東北で良かった」と東北自慢をする投稿が相次いでいる、との囲み記事らしいほのぼのとする内容だ。署名を見ると、福島支局の記者。記事は26日朝から一気に話題になり、午前10時半時点で4500件以上の投稿が確認できた、とあるから夕刊に掲載するにはかなり素早い対応が求められる。どう情報をキャッチして、夕刊出稿に結びつけたのか参考までに聞いておきたい。この話題は翌27日朝刊で、朝日が社会面、東京が1面で追いかけていた。本紙は27日朝刊対社面の[ネットウオッチ]で、支局記者と統合デジタル取材センターの記者の連名で、これらほのぼのツイートのきっかけが「楽天の勝利」からだったと分析するなど新たな要素を加えて、さらに読ませた。ただ、他紙が東北のきれいな風景などの投稿を写真に使っていたのに比べ、本紙は文字のツイートだったのがやや残念に思った。
司会 まずは地方部。
地方部長 記者が今村復興相の発言を聞いて、ネット上で騒ぎになるだろうとツイッター画面をチェックしていた。途中から「東北でよかった」に#(ハッシュタグ)がついてコメントが増え、26日朝までに約1000件の投稿があることがわかったので、支局から夕刊用に出稿した。ネットに通じている若い記者が地方支局に増えているので心強い。写真は投稿者に許可をもらって2枚送ったが、紙面の都合で載らなかった。
司会 地方部から朝刊に引き継いだ統合デジタル取材センター。
統合デジタル取材センター編集委員 統合デジタル取材センターでもネットに詳しい記者が前日夜から把握し、翌日朝刊に[ネットウオッチ]を載せようと話していた。夕刊は考えていなかったが、福島支局の記者が出稿してくれた。夕刊に載っていなければ、朝刊で他紙と同着だったかもしれない。支局次長を通じて統合デジタル取材センターに相談してもらい、一緒に[ネットウオッチ]の記事を作るという先例にしていきたい。