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第8回 男の嫉妬=室井佑月

 嫉妬心は、男のほうが強いと思う。

     男は自分の所属する集団をピラミッドに見立て、上から何番目のグループに自分がいるかを、絶えず気にしているような気がする。

     大きな会社の中であっても、小さな趣味の会合みたいなものであっても。

     集団における自分の持ち味の生かし方を模索しているのではない。自分の持ち味を生かし、集団における自分の順位を一つでも上げようと考えている。それか諦めて、自分の現在の居場所に、ため息をついている。

     それが全て、といったら言い過ぎかもしれないが、自覚してるか自覚してないかは置いといて、そういう男は多い。子を産む性の女とは違う。

     あたしは30歳で子どもを産んだ。そうしたら、目立った活躍をしたいという願望はなくなった。

     きっと、子を産んだことで、生まれてきた意味という大きな課題をクリアしたような気持ちになったのかもしれないし、いうほど出世願望もなかったのかも。

     あたしは物書きで、考えることが仕事だから、生まれてきた意味なんてことも考えたりするが、ふつうの女はそんなこと考えたりしないよ。

     あたしの母も、まわりの友達も、そんなことを考えているようには見えない。

     子のいないおしゃべりな女友達も、仕事の話はするが、生まれてきた意味の話なぞしたことがない。

     人生の、意味なんて考えない。旬の食べ物を食べたり、愛(め)でていた植物の花が咲いて喜んだり、子どもの成長を感じたり、夫の良いところを再発見したり、そうやってその都度その都度の人生を楽しんでいるのが女じゃないか。

     だから、八百屋さんの女房も、医者の女房も、独り者も、性格さえ合えば横つながりで仲良くなれる。自分が所属しているグループの何番目かなんてこと、特殊な女しか考えない。

     でも、男は違うんだな。自分はなんで生まれてきたんだろうというようなことを悶々(もんもん)と考えている。子を産む性の女と違って、男一匹、人生死んだら終わりと考えてしまうから、集団の中の自分の位置(成績)を過敏に気にするし、それが自分の価値だと思い込む。

     たまに、そんなことはどうでもいい、俺は俺、そう強く主張する男に出会ったりするが、話を聞けば聞くほど、強がりだとわかったりして。そんな男こそ、自分が足を突っ込んでいる世界で、誰よりも認めてもらいたい、甘えたがりの可愛らしい男だったりする。

     こういう男の特性を理解していると、愛する男の応援団になれる。

     まず、ポジショニング競争をしている男の、決して邪魔をしちゃいけない。相手は真剣なのだから。

     男たちの集まりに女のあたしたちも呼ばれることがある。男たちが漠然と決めているヒエラルキー・ルールに、土足で踏み込んでいってはならない。まして、崩すなんてこと、しでかしてはいけない。気づかないフリをするのが正しい。

     あなたが美人でモテるタイプであったら、特にそうだ。ヒエラルキーのてっぺんをヨイショするものいただけないし(女のクセに参入すんな、とてっぺん以下から嫌われる)、ナンバー2、ナンバー3を差し置いて、好感を抱いているまだステディーな関係でもないナンバー10くらいな男とイチャイチャするのもいけない。それをしたいなら、ほかの男がいないところでしろ。

     なぜなら、良い女と良い感じという馬鹿みたいな理由から、ヒエラルキーの順位が微妙になったりもする。

     真剣に順位を上げようと争っている男は、これ以上調子付かないようにと、ナンバー10のいじめをしたりするだろう。男は嫉妬深いんだからさ。

     だとすれば、あなたが好ましいと思っているナンバー10の男にとって、迷惑極まりないことになってしまう。

     きちんとステディーな関係としてみんなの前で紹介されるようになってから、本領発揮。ナンバー10の後ろに隠れて、わざとらしいくらい控え目にする。なぁに、彼があなたを披露する場でだけ、そうしてりゃいい。ナンバー10は美人の彼女にかなり愛されている、そうまわりに思わせることが肝心。彼の株は一気に上昇するはずだ。

     また、旦那や息子がヒエラルキーの下のほうであったら、特に配慮してあげる必要がある。ヒエラルキーにつながる話をしてはいけない。

     成績の悪い子どもに「まったくおまえは出来が悪いんだから!」と叱ってもしょうがないでしょ。そのことをいちばん気にしているのは当の本人なんだしさ。

     パートナーや息子の競争を応援をするなら、ウザくならない程度に「あなたは出来る人」とたまにいって、ケツを叩(たた)く。

     外で嫌なことがあったような顔をしていたら、「あなたはあたしにとって代わりのいない大事な人」としんみりした口調で伝える。

     そんな甘ったるい台詞(せりふ)、口が痒(かゆ)くなる? 口が痒くなっても我慢せよ。パートナーや息子を愛しているなら。

     どんな自分であっても絶対に愛して受け止めてくれる人がいるってことは、なにか行動をするときの自信につながる。それがあったら、男一匹、一世一代の勝負もできよう。

    室井佑月

    1970年、青森県生まれ。雑誌モデル、銀座・高級クラブでのホステスなどを経て、1997年に「小説新潮」主催「読者による『性の小説』」に入選し、作家デビュー。小説家、随筆家、タレントとして多岐にわたり活動している。2000年に第一子となる男児を出産。2016年には、一人息子の中学受験と子育てについて愛と葛藤の8年間を赤裸々に綴ったエッセー『息子ってヤツは』(毎日新聞出版)を上梓。主な著書に『熱帯植物園』(新潮社)、『血い花』(集英社)、『子作り爆裂伝』(飛鳥新社)、『ママの神様』(講談社)などがある。

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