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考・皇室

社会を映す/7 「直系男子」守る旧華族 霞会館「藩屏」掲げ結束 典範に準じ伝統継承

霞会館設立の流れ

 「皇居で育てている蚕の糸は大変貴重なものだと聞いています」「美智子が熱心に世話をしています」

     「歌会始の儀」が終わった1月13日午後、天皇、皇后両陛下が東京・霞が関の霞が関ビルディング34階に入る一般社団法人「霞会館」を訪れ、特別室で役員ら10人と食事を取りながら談笑された。

     退位の意向がにじむ昨年8月のおことばについては誰も話題にせず、皇太子時代の思い出話など終始なごやかな雰囲気だった。食事に同席した橋本春彦理事は「両陛下は毎年1月に霞会館に足を運ばれる。歴史的経緯や雅楽など伝統文化の保護活動を通じ、親近感をお持ちいただいていることと思う。会員はみな皇室を支えたいとの思いがある」と話す。

     霞会館は旧華族家の男性当主と成人した直系の息子を会員とする団体だ。現在約650家、740人の会員がいる。団体の定款に皇室を守る壁を意味する「皇室の藩屏(はんぺい)」を掲げる。会員が男性当主や直系男子に限られている理由について、関係者は「定款に記載はないが、皇室典範に準じているため」と説明する。

     霞会館の前身は、明治時代に華族制度の創設に伴い作られた団体「華族会館」だ。成り立ちや文化の異なる公家と武家の華族をまとめる親睦団体の機能を果たし、勲功で華族となった家も加わった。

     戦後、華族制度は廃止されたが、結束を維持するため名称を会館の建つ地名にちなみ「霞会館」と改め、存続させた。霞会館の佐藤栄治事務局長は「華族制度廃止の際、昭和天皇から『先祖の名を辱めぬよう日本再建のために努力することを望む』との言葉をいただき、存続を決めた」と説明する。

     現在はどのような活動を行っているのか。霞会館は「皇室が自ら担い手となった日本文化の伝統の保持」と主張する。

     毎年1月に皇居・宮殿で開催される歌会始の儀では、霞会館の会員ら旧華族でつくる披講会(ひこうかい)のメンバーが参加し、和歌を詠み上げる。学生時代から披講会に入る早稲田大の園池公毅(きんたけ)教授は「伝統文化の維持が皇室の存在意義につながり、皇室を守ることになる」と話す。

     霞会館では、披講会の活動のほか、装束の着付けや雅楽、蹴鞠(けまり)などの文化活動に助成金を出し、会員の旧華族らが活動に参加する。今の天皇陛下の即位にかかわる儀式の際には、出席者の装束の着付けなどで多くの霞会館の関係者がボランティアで手伝った。「今回の代替わりでも宮内庁の要請があれば駆けつける」と話す会員もいる。

     ただ、霞会館も問題を抱える。その一つが会員数。華族制度廃止時は約890家だったが、女性の当主や跡取りは会員になれないため減少が続く。ある幹部は「皇室典範が改正されて女性宮家が認められれば、霞会館も会員資格の見直しを検討する可能性がある」と語る。

     華族制度を研究する日本大商学部の刑部(おさかべ)芳則准教授は「旧華族は戦前、難しい局面で政治にかかわり、その結果華族としての特権を全て失った」と述べ、「伝統文化をやっていれば過去のように政治的責任に関与しないですむとの考えもあるのではないか」と指摘する。

    堂上公家続く交流

     霞会館のメンバーのうち、旧公家だけでつくる「堂上会(とうしょうかい)」という会がある。明治維新以前に、京都御所の清涼殿に昇ることを許された公家を「堂上公家」と呼び、その堂上公家の家で構成した団体だ。現在の会員数は約100人。東京に住む会員が大半だが、東京に移らず京都に残った家の会員もいる。

     天皇、皇后両陛下は京都を訪れた際、宿泊する大宮御所で京都在住の堂上会の会員ら20~30人と面会する。会員が夫婦で並ぶ中、両陛下は1組ずつあいさつに回る。ある関係者は「昨年10月に京都に来られた際もお会いしたが、ご苦労さまですと言葉を交わしただけで退位の話はしなかった」と語り、「両陛下はテレビで見るよりいつもほっとした表情をしている。京都府知事は代わっても私たちは代わらないので、安堵(あんど)するのでは」と話す。

     天皇家は華族の中でも堂上公家を特別視してきた。昭和天皇は華族制度が廃止される際、「堂上華族だけは残すわけにはいかないか」と述べたとされる。

     堂上公家への特別待遇は今も続く。堂上会の会員は京都で両陛下に面会するほか、天皇誕生日や新年祝賀でも代表者が面会することが慣例となっている。日大の刑部准教授は「天皇にとって近衛家など名門の公家は婚姻関係もあり、非常に近い存在。堂上公家の多くはそれら名家から派生した家であり、広い意味で天皇の大ファミリーの一員」と話す。

     一方、その関係も崩れてきているとの声もある。京都在住の堂上会のある会員は「天皇も代替わりすれば関係が薄まり、京都の堂上会と会うこともなくなるのではないか」と懸念している。=つづく

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