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幸せの学び

<その172> 俳優と古武術=城島徹

古武術を試す榎木孝明さん

 水彩画家でもある俳優の榎木孝明さん(61)に「気」の威力を教えられた。美大で絵画を学び、劇団四季で俳優人生をスタートさせたスリムな二枚目俳優はこれまで数多くの映画やドラマに出演してきたが、古武術の達人という意外な顔を持っている。

     1984年の連続テレビ小説でテレビデビューした榎木さんはサスペンスシリーズの探偵役がはまり役となり、昨年は大河ドラマ「真田丸」にも出演した。

     若いころから絵筆を携え、世界各地を旅してきた。インドで飲まずで食わず過ごしたのに体調が改善したことから、2015年には専門家の指導を受けながら飲み物以外は摂取しない「不食(ふしょく)」に挑んだ。体重を9キロ落とした体験は著書「30日間、食べることやめてみました」につづられている。

     そんなマルチ俳優と会う機会があった。20代から榎木さんと交友のある知人が企画したプライベートな飲み会で、せっかくの機会なので「絵を描くことは演技に生かされるものですか?」と尋ねてみた。

     彼は最初の大役となった映画「天と地と」の思い出に触れた。ロケで上杉謙信役を懸命に演じたが、監督を務めた角川春樹さんの「OK」がなかなか出なかったといい、「悩み抜いた末に、オレが、オレが、という力を抜くと、すぐにOKが出ました。絵も描くことも似ていて、我をなくすことで、風景が私に『描いてくれ』と訴えてくるのです」と答えた。

     その話の続きで榎木さんが古武術で相手を自在に動かすことを知った。「本当に?」といぶかっていると、彼は「ちょっと試してみましょう」と私を真正面に立たせ、腕をとった。

     「押してみてください」と言われて押すと、互いに動かない。「足で踏ん張っているから当然さ」。ここまではいい。ところが、ふっと視線を左右に揺らした彼に腕を押された途端、後ろへよろめいた。「あれ?」。不思議だ。私に続く“挑戦者”もヨタヨタと倒されていく。

     「体力の負担が大きい介護にも応用できて、『気』を使うことで体重40キロの人でも80キロの寝た人を難なく起こせます」「ラグビーのスクラムでは『がんばろう』より『ありがとう』の方が力を出せます。選手たちにも試してもらいました……」。

     榎木さんが指先で意のままに操ったのは、体の中央を頭から縦にまっすぐ貫く「正中線」に秘密があるらしい。それをわずかにそれるだけで相手の体はいとも簡単に揺れ動くという。疑い深い私はこの不思議な現象を解明するという“宿題”が与えられた。【城島徹】

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