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「かくれんぼしよ」。迷路の中でお父さんから隠れる倖吏生ちゃん

 見渡す限りの黄色、その花たちを包み込むように澄み渡る青空。風にのって蜜のほんのり甘い香りが広がる。背の高い菜の花の中から、絶えず笑い声が響いていた。福島県南相馬市、萱浜で捜索や地域再生のため活動を続けてきた「福興浜団」が主催する菜の花迷路には、お年寄りから小さな子どもたちまで例年にも増して多くの人々が訪れた。

     初めて南相馬を訪れたのは2012年、すでに震災から1年以上がたっていた。「福興浜団」の代表、上野敬幸(たかゆき)さん(44)を訪ねるためだった。道路に乗り上げたままの車や瓦礫(がれき)。人の気配が消えた街は、時の流れがせき止められたかのように沈黙していた。

     東京電力福島第1原発の事故を受け、周辺はほとんど捜索の手が届いていなかった。累々と広がる瓦礫の中、自らの手で行方不明の両親や娘さん、息子さんを捜し歩いた当時を、「地獄のようだった」と上野さんは振り返る。3歳だった息子の倖太郎(こうたろう)くんはまだ、見つかっていない。

     シャッターを切りながら、怒りがこみ上げた。なぜ、もっと早くこの地を訪れなかったのか。その怒りは、自分自身に向けられたものだった。

     「こっちこっち!」と迷路の入り口で、小さな少女が手を振っている。上野さんの娘、倖吏生(さりい)ちゃんはあの時まだ、お母さんのおなかの中だった。曲がりくねった花の小路を駆け抜ける少女の背中を追いかけながら、ふと空を見上げる。この笑い声はきっと、大切な人たちに届いているはずだ、と。(フォトジャーナリスト)

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