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余録

歯の旧字「齒」は口の上下に…

 歯の旧字「齒」は口の上下に歯がならぶまことに分かりやすい象形文字である。この字が歯そのもののほか年齢の意味で用いられたのは、もともと動物のそれを歯で判別したからという(白川静(しらかわしずか)著「常用字解」)▲この漢字が生まれた当時の甲骨文(こうこつぶん)にすでに歯を病むかどうかを占った文がある。昔の人にとって虫歯などは深刻だったのだろう。また論語で「歯(し)を没す」とあるのは命が尽きるとの意味だった。年齢といってもこちらは寿命であろう▲「人は歯をもって命とするゆえに、歯という文字はよわいともよむなり」というのは江戸時代の本草(ほんぞう)学者、貝原益軒(かいばらえきけん)の言葉である。昔の人が歯を寿命と関係深いものと考えたのは、日ごろの実感にてらして分かりやすいところである▲厚生労働省の推計によると、80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が昨年初めて半数を超えたという。「20本」は入れ歯なしでほとんどの物が食べられる目安で、入れ歯と縁のないお年寄りがどんどん増えているということらしい▲この「80歳で20本以上」の高齢者、1993年には1割程度だったが、2005年には4分の1近くになり、今回5割を上回った。この急増、歯磨き粉の成分改良に加え、1日に複数回歯を磨く高齢者が増えているためのようである▲漢文に出てくる言葉で「歯徳(しとく)」というのがある。高齢になるとともに徳が成就することで、徳の高い年長者その人をもいう。それぞれ歯のケアにいっそう気を配ることでめざしたい「歯徳の国」である。

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