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余録

享保年間の江戸で…

 享(きょう)保(ほう)年間の江戸で初めてオランダのビールを飲んだ人が書いている。「ことのほか悪(あ)しき物にて、何のあじわいもない」。つまりは飲んだらひどかったというのである▲それが明治には「苦い」ながら飲む人が増えたのは、学ぶべき西欧文明の味だったからだろう。今も初めてのビールに享保の人と似た感想をもつ人はいようが、その苦さがうまさに変わるのが大人のしるしと教えられた一昔前だった▲そんな過去を思えば、若者のビール離れの原因が「苦いから」というのが何ともミもフタもなく聞こえる。ビールのうまさを知ってほしいというのもおせっかいといわれる昨今だが、そのさなか値段まで上がるビールへの逆風である▲各地でビアガーデンのオープンが伝えられる6月である。だが月初めからスーパーの店頭ではビール類が1割ほど値上がりした。量販店などの過剰な安売りを防ぐという酒税法改正のためで、飲食店のビール価格にも影響が出ている▲値上がりの苦みも加わったビール消費の行方には暗雲漂うが、実は酒税法ではビールの定義の変更も決めている。こちらは来年春から原料に果実や香辛料が使えるようになる。メーカーが新たな味に活路を求めるのは成り行きだろう▲ユズ、コショウ、ゴマ、バジル、ハチミツ味などは驚くにあたるまい。茶、昆布、ワカメ、カツオ節味も登場しそうなこの先のビールだという。若者にうけるかどうかは知らないが、これならば享保の江戸っ子も「あじわいあり」といいそうである。

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