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社説 ヘイト対策法施行から1年 社会の病理を克服したか

 「ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策法」の施行から1年がたった。侮辱的な言葉で特定の人種や民族への差別をあおるデモは、減少傾向にあるという。

     裁判所が特定の地域でのデモ実施を禁じる仮処分決定を出したり、警察が取り締まりを強化したりするなど、公的機関の対応が一定の抑止効果を生んでいるのは確かだろう。

     それでも、「帰れ」「たたき出せ」といった乱暴な言葉を使うヘイトスピーチはなお後を絶たない。

     ヘイトスピーチは社会の病理だ。それを許さない当たり前の社会規範が浸透することが大切である。

     地方自治体は、国とともに差別解消に必要な措置を講じる責務を対策法で課せられている。積極的な対応が求められる。

     川崎市は、施設の利用申請者が差別的な言動を行う可能性がある場合、警告や利用不許可の措置が取れるように、今秋にもガイドラインを作成し公表する予定だ。事前規制につながる内容のため、市は第三者の意見を求め公平な運用を目指す。

     「表現の自由」に留意することは当然だが、ヘイトスピーチは明確な人権侵害だ。各自治体は地域の実態に沿った規制策を検討してほしい。

     街頭デモが減少する一方で、インターネット空間でのヘイトスピーチは、むしろ活性化しているように見える。その対策は喫緊の課題だ。

     大阪市はこのほど、ヘイトスピーチと認定したネット上の動画3件の内容や投稿者名(ユーザー名)を公表した。昨年7月、全国で初めて制定した条例に基づく措置という。

     小学生でもパソコンやスマートフォンを利用する。教育現場での啓発に国全体で取り組むべきだろう。

     残念なデータがある。

     法務省は3月、在日韓国・朝鮮人を含む約4200人の中長期滞在外国人を対象にした差別に関する調査結果を公表した。昨年末に初めて行われたものだ。

     3割の人が差別的発言を「受けた」とし、4割の人がアパートなどの入居を「断られた」と回答した。

     外国人や文化が異なる人との共生は、日本社会にとって欠かせない。社会に根を張る差別意識と向き合うことが必要だ。それをヘイトスピーチの根絶につなげたい。

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