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余録

「Uターンなさりたいなら…

 「Uターンなさりたいなら、どうぞ。レディーは引き返しませんから」。鉄の女と呼ばれた英国のサッチャー元首相の名セリフだ。不況下で、猛批判を浴びながらも、厳しい経済政策を断固貫いた指導者だった▲前言を突然ひるがえし、解散・総選挙に打って出たのは、サッチャー氏以来の女性首相、メイ氏である。選挙で大勝し、欧州連合(EU)との離脱交渉を強力に進める作戦のはずが、想定外の結果となる▲社会保障で要となる公約を、派手に転換したのが高くついたようだ。高齢者に自己負担増を求める政策に「認知症税」のレッテルが貼られると、わずか数日で不名誉なUターンを見せた▲メイ首相が選んだスローガンが「強く、安定した指導者」だったのは何とも皮肉なことだ。10分程度の演説で12回も使ったと指摘する報道もあったほどだが、相次ぐUターンで「弱くブレる指導者」と嘲笑の的になった▲EU離脱でも、もとは反対派だったメイ氏である。「Uターン・クイーン」のあだ名もわかる気がするが、女王がいれば王もいるのが英国だ。1970年代、失業者の急増にたじろぎ、緊縮財政策からばらまきに転じたヒース元首相は、堂々たる「Uターン・キング」の名を残した▲「王」と「女王」は、ともに総選挙の賭けに敗れ、どの党も過半数の議席に達しない「宙づり国会」を招いてしまう。一方、「王」が英国の加盟を導いたEU(当時は欧州共同体)から、「女王」が離脱を主導しているのは、歴史のいたずらなのか。

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