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いま、防災は

巨大地震に備える/4止 予知・予測には限界も 等身大の科学、社会に生かせ

大規模地震の予測可能性や防災対策について検討を進める中央防災会議の作業部会=東京都千代田区で1月31日、飯田和樹撮影

 2016年4月1日。三重県南東沖でマグニチュード(M)6・5、最大震度4の地震が発生した。目立った被害もなく、気象庁が記者会見を行うこともなかったが、この地震は多くの地震学者たちをざわつかせた。規模は小さいが、震源の深さから考えると、発生が危惧される南海トラフ巨大地震と同じくプレート境界型の地震である可能性が高かったためだ。

     10日後に開かれた政府の地震調査委員会でも、この地震に関する議論に相当な時間が割かれた。終了後の記者会見で、委員長の平田直・東京大地震研究所教授は「この地震がどこで起きたのかは、今後の南海トラフ巨大地震を評価する上で非常に重要。もしプレート境界でこうした地震が頻繁に起きるようなことがあれば、巨大地震が起きることとの関連が非常に心配される」と話した。

     この懸念は、一部現実のものとなる。さまざまな研究機関による精査の結果、この地震が1944年の東南海地震以来、およそ70年ぶりに発生したプレート境界型地震であることが明らかになったからだ。一方で安心材料もあった。この地震の影響による海底の地殻変動が数日で止まったことなどから、短期的により大きな地震を引き起こすことがなさそうだということも分かった。

     これらが地震後に分かったのは、海底地震津波観測網「DONET(ドゥーネット)」で震源に近い位置の観測データを取ることができていたことや、海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)により、海底下の構造が詳しく調査されていたためだ。近年の地震学の成果とも言える。ただ、あくまで発生後に精査した結果判明したという点から考えると、地震の予知・予測を防災に活用するためのハードルは、数え切れないほど多い。

     国は中央防災会議の作業部会で、現在の予知・予測の水準に見合う防災対策の検討を進めている。大規模地震につながる可能性があるケースは、四つある。(1)南海トラフ巨大地震の震源域(東海地方沖から九州地方沖にかけて)の半分程度のエリアでM8以上の大規模地震が発生した場合、もう一方のエリアでも発生の可能性(2)同震源域でM7程度の地震が発生(3)東日本大震災前に観測された地震活動などを複数観測(4)東海地震予知の判定基準とされるプレートのすべりなど、前兆現象を観測--のケースだ。

     (1)(2)については「今後、南海トラフの発生確率が普段に比べ100倍以上高い」などと相対的な確率の評価が可能だとした。ただ、まだ起きていない地震を予知する(3)(4)は、データが観測されても評価が難しいとして実質的な議論は進んでいない。

     国は(1)(2)のケースが起きた場合、「地震発生の切迫度」と、海からの近さや住民の高齢化率などの「地域の脆弱(ぜいじゃく)性」を掛け合わせることで対策の必要性をレベル化し、そのレベルに応じて防災対応を変える案を示した。例えば、地震発生の確率が高まった時に耐震化されていない建物から退避することなどを検討する。

     ただ、先月26日に開かれた作業部会では、委員の尾崎正直・高知県知事から「自治体によって備えが違う。(国に)一定の方向感は示してもらい、個々の対応は自治体での検討が必要」などの意見が出た。作業部会は年度内に報告書をまとめる方針だが、新たな防災対応の実施には各地域での検討が不可欠で、国がどこまで有効な対策案を示せるかは不透明だ。

     この作業部会は東海地震の予知を前提に作られた大規模地震対策特別措置法(大震法)の見直しを視野に議論が始まったが、法改正の中身までは踏み込まない方針だ。だが、委員の一人は、「私たちがアウトプットしなければならないのは、等身大の科学をどうやって防災に生かすかだ。高い精度の予知を前提とした大震法は見直す必要があると、社会に伝えないといけない」と指摘する。【飯田和樹、金森崇之】=おわり


    地道な対策が必要

     地震の予知・予測の限界について、私たちはどのような認識を持てばよいのか。

     京都大防災研究所地震予知研究センターの橋本学教授(測地学)は、「防災という観点で考えるのであれば、予知や予測には頼らないことだ」と断言する。

     1995年の阪神大震災以降、観測網の整備が進んだ。その結果、地盤がどのように揺れを増幅させるのかという問題などについては、随分と知見が増えた。しかし、予知・予測については「まだまだ研究が進んでいない。一般の人々にはきちんと伝わっていないかもしれないが、どこまで行ってもあやふやな情報しか出せない」と話す。

     橋本さんは「地震学者にとって地震予知は夢であり、高い目標ではあるが、防災に重要なことは別にある」と考える。「人の命を奪うのは地震そのものではなく、家屋の倒壊や土砂崩れ、津波など。大切なのは、コストや地域特性を考えながら、これらの対策をコツコツと一生懸命やることだ」と語る。【飯田和樹】

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