メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

「拝啓 僕ノ今日ノ生命ハ…

 「拝啓 僕ノ今日ノ生命ハ『病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)』ニアルノデス」。俳人、正岡子規(まさおかしき)は結核性カリエスで激痛なしに身動きできぬ病床から新聞連載「病牀六尺」を死の2日前まで続けた▲冒頭の手紙は原稿が載らなかった日の編集主任宛てのもので、休載を知って泣いたとある。「モシ出来ルナラ、少シデモ載(の)セテ戴(いただ)イタラ命ガ助カリマス」。子規はそう懇願したのだ(復本一郎(ふくもといちろう)著「正岡子規 人生のことば」岩波新書)▲「なりたい自分になる」。こちらは昨年9月、そんな言葉とともにがんとの闘病の病床からブログを書き始めた小林麻央(こばやしまお)さんだった。「がん患者」という意識に心や暮らしを押し込めていた今までの自分から抜け出そうと考えたのだ▲「子供に『何もしてあげられなくてごめんね』と胸を痛めているママがいたら、あなただけでなく、私も同じです」。麻央さんの言葉は読む人の心にスッとしみ入った。記された闘病も、家族との時間も人々の心の奥の糸を震わせた▲「私が怖(おそ)れた世界は優しさと愛に溢(あふ)れていました」。世界の女性100人の一人に選んだ英BBCへの寄稿ではブログの反響にふれてそう記した。「病気となったことが私の人生を代表する出来事ではない」との言葉も忘れられない▲「愛してる」と夫に告げた直後の34歳での旅立ちである。子規と同じく30代半ばのやるべきこと、やりたいことを多く残しての死だった。その2日前の最後のブログにはこうあった。「皆様にも、今日笑顔になれることがありますように」

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 新潮45休刊 突然の決断、予想超えた批判
    2. 伊方再稼働許可 「福島の事故忘れたか」被爆者ら怒り
    3. 新潮45休刊 「組織ぐるみ擁護に怒り」新潮社前でデモ
    4. 秋の味覚 毒キノコに注意を 大豊作の兆し
    5. トランプ米大統領 自慢に失笑 国連総会で各国首脳ら

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです