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余録

プロ野球・阪神タイガースで活躍した…

 プロ野球・阪神タイガースで活躍した赤星憲広(あかほしのりひろ)さんが高校野球の思い出として真っ先に挙げるのが甲子園の土だ。「1993年のセンバツ大会で、初めて踏んだふかふかの黒土の感触が今でも忘れられない」という▲阪神甲子園球場は完成以来、グラウンドの土を一度も入れ替えたことがなく、風や雨で失われた分だけをつぎ足してきた。赤星さんが踏みしめた土には、球場が創設された93年前の土も混じっている▲グラウンドの整備を約30年続けている阪神園芸の金沢健児(かなざわけんじ)さん(50)は「甲子園の土はぬか床のようなもの」と話す。毎冬、全体を30センチほど掘り返し、均等に水分が染み込むように自然の雨で固め、串を刺して硬さを慎重に確かめて仕上げる▲ガソリンを燃やして土を乾かしたこともあるほど、甲子園球場は元々排水が悪かった。日本一水はけの良いグラウンドと評価されるようになったのは、ぬか床を毎日かき混ぜるように地味な手入れを積み重ねてきたからだ▲グラウンドが原因で球児につらい思いをさせないというのが金沢さんの信念だ。水を十分吸収できる土は、球のイレギュラーバウンドを減らしてくれる。足首への負担も小さい。「思う存分に力を発揮してほしい」とエールを送る▲大会が中止された太平洋戦争中に焼夷(しょうい)弾の炎で焦げた土も、引き分け再試合を戦った先輩の汗や涙を含んだ土も混じっていよう。選手権大会に向けて沖縄から地方大会が始まった。今夏は甲子園の土にどんな思い出が染み込むだろうか。

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