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どんな生き物?毒針で刺されたらどう対処?

もしかしてヒアリかも(見分け方)

 南米原産で強い毒を持つ「ヒアリ」が関西や名古屋、東京の港で相次ぎ発見され、不安が広がっている。毒針で刺されると、人によってはまれに重いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こし、死に至ることもあるという。ヒアリはどんな生き物で、刺されたらどのような対処が必要なのか。【和田浩幸/統合デジタル取材センター】

女王アリは7年間、毎日卵を2000個産む

 環境省によると、ヒアリは1900年代前半に貨物船を介して米国に侵入。2000年以降は豪州や東南アジア、中国など環太平洋諸国に広がった。

 国内では5月以降、中国・広州から神戸港に到着し、兵庫県尼崎市内で開封されたコンテナ内から女王アリを含む500匹以上が見つかったほか、神戸、名古屋、大阪、東京の4港で個体が確認されている。働きアリは放置しておけば死んで終わり。国内での繁殖が懸念されるのは女王アリが計3匹見つかったためだ。環境省は「完全に確認できなくなるまで、水際対策を続けたい」としている。

 ヒアリはドーム状のアリ塚を作る。大きい物では高さ90センチ、深さ180センチにもなり、40万匹を擁する。アリ塚に近づいたり刺激したりする動物に集団で襲いかかり、小動物は襲ってえさにする。

 繁殖力はきわめて強い。女王アリは雄アリとのたった1度の交尾で一生分の精子をため込む。平均産卵期間は約7年間で、1日最大2000~3000個の卵を毎日産み続ける。働きアリは放置しておけばやがて死ぬが、女王アリの侵入を見逃し、巣作りを許せば根絶は困難だ。生存競争のライバルとなる在来アリへの攻撃は激烈とされ、農作物を食い荒らして被害を出すこともあり、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っている。

 ヒアリを特定するのは専門家でなければ難しいが、環境省は体の特徴など見分け方のポイントについて解説し、疑わしい個体を見つけたら、できれば写真を撮り、同省地方環境事務所(一覧はhttp://www.env.go.jp/region/index.html)に連絡してほしいと呼びかけている。

日本へのヒアリ侵入は予言されていた

 実は、ヒアリの侵入を10年ほど前に予言していた学者がいる。北海道大の東正剛名誉教授(動物生態学)だ。2008年に著書「ヒアリの生物学」で可能性に言及した。「日本に入ってくるのは時間の問題でした」と話す。

 東氏によると、被害が深刻な米国では年間1000万人以上が刺される。このうち8万人が、体が毒に過剰反応し呼吸困難や血圧低下などが急速に表れるアナフィラキシーショックを引き起こす。年間約100人が死亡しているとのデータもあるという。

 刺されないよう注意は必要だが、刺されたら必ず重篤になるわけではない。東さんは「正しい知識を持っていれば過剰に恐れる必要はない」と言う。毒への反応は各人各様で、東さんも約10年前、米国でヒアリの巣を調べていた際に腕を刺されたが、傷ができた程度だったという。

日本ではスズメバチで年間20人前後が死亡

 アナフィラキシーショックは、急速で重篤なアレルギー反応のことだ。細菌など外から入ってくる異物から自身を守る免疫反応が、食物や花粉など特定の物質に過剰反応し、体に変調をきたすのがアレルギー反応。その原因物質はアレルゲンと呼ばれる。

 アリや蜂の毒もアレルゲンの一つ。厚生労働省の統計によると、スズメバチなどに刺されアナフィラキシーショックで死亡する人は日本でも年間20人前後に上っている。ちなみに、アリはスズメバチの仲間から進化した昆虫で、ミツバチとスズメバチよりアリとスズメバチの方が近い関係とされる。

 ヒアリに刺された場合、激しい痛みに続き全身にじんましんが出る場合もあり、安静にする必要がある。呼吸困難や意識障害などアナフィラキシーが疑われる場合には気道確保や輸血などの処置が必要で、一分一秒を争い病院へ搬送しなければならない。

ヒアリ生息圏は人の生活圏と重なっている

 要は、ヒアリはスズメバチ程度に警戒しなければならないということのようだが、スズメバチよりやっかいな点がある。

 東さんによると、ハチも人の生活圏で巣を作ることはあるが、通常は山林に生息し、近づかなければ危険は及ばない。攻撃的な時期も子育てをする夏から秋にかけてとされる。これに対し、ヒアリは農耕地や公園、住宅の庭など平らな土地に好んで巣を作り、季節のない熱帯原産で一年中攻撃性が強い。

 さらに、空中で音を立てるハチは危険に気付きやすい。ヒアリの場合は誤って巣を踏んだり、子供がアリ塚に座ったりして音もなく集団で攻撃される。

 東さんは「人間の生活圏を好むヒアリが定着すれば、ハチより刺される可能性は高くなる。子供が公園で襲われるなどの被害が出かねないし、農業被害が深刻化しかねない」と懸念している。

 ヒアリが定着している米東部では年間4人に1人が刺されている。もちろん、アリ塚を見逃さず、近づいて刺されないように用心することが必要だ。仮にヒアリに襲われた場合には、慌てて素手で払ったりせず、体を揺すって落とすのが常識となっており、この動作は「ヒアリダンス」と呼ばれている。


 ヒアリの被害で「米国で年間100人死亡」については、山本公一環境相が2017年7月18日に「専門書に書いてあるが根拠が確認できない」と発表しました。

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