獣医師養成課程のある16大学

毎日新聞アンケート 既存大学、新分野研究体制「整備済み」

 獣医学部新設に関して毎日新聞が実施した大学アンケートからは政府が新設を認める前提として「既存大学では新分野への対応が困難」などの「4条件」を設けたにもかかわらず、検証が不十分なまま手続きが進められた実態がうかがえる。加計学園による計画は4条件を満たすのか--。衆参両院が10日に行う閉会中審査でも、論点の一つとなる。

 国家戦略特区での獣医学部新設は、愛媛県今治市などが提案。「国立大が研究者養成、私立大が臨床獣医師養成が中心だったが、特区は第三極の国際水準の学部」と差別化を図り、動物由来の感染症防疫や創薬などライフサイエンス分野での研究・教育を掲げた。

 山本幸三地方創生担当相も「新たなニーズに対応できる獣医師を重点的に養成するには、カリキュラムの抜本的な見直しや専任教員の大幅な入れ替えが必要。既存でそこまでの改革を行うのは極めて難しい」と説明。4条件を「クリアしている」との見解を示した。

 これに対し、アンケートに回答した9大学のうち6大学がライフサイエンスなど新分野の研究体制に関し「整っている」と答えた。

 欧米に比べ日本の獣医学部は教員やスタッフの人員が少ないとの課題が指摘される中、山口大の木曽康郎共同獣医学部長は取材に「(他大学との)教育の共同化で教員や学生の規模を増やし国際水準の教育を目指している。特区の内容が既存大学でできない新分野との認識はない」としている。

 文部科学省の前川喜平前事務次官は毎日新聞のインタビューで「既存の16大学にヒアリングして国家戦略特区の諮問会議でも十分な議論が必要。しかし、全然やっていない」と批判。アンケートからも、新設計画が4条件を満たしているかの議論が尽くされたとは言い難い現状が浮かぶ。

 また、アンケートでは加計学園が今治市で進める新設計画に4大学が反対を表明。北里大は、司法試験合格率の低迷などで廃止が相次いだ法科大学院や定員割れが多い薬学部を引き合いに「長期的視野で新設を考えると、同じてつを踏むと思われ、結果的に獣医学教育改革に逆行するのでは」と疑問を呈した。

 獣医師の需要が増えるかも不透明だ。ペットフード協会の推計では2016年の犬・猫の飼育数は約1972万5000匹で前年比約6万6000匹減。逆に、獣医師資格を持つ人は、農林水産省の調べでは3万9098人(14年末)で10年前より8000人近く増加した。【田所柳子、田口雅士、三股智子】

獣医学部新設の4条件

 政府は2015年6月に規制緩和策などを盛り込んだ成長戦略を閣議決定。この中で、愛媛県今治市が国家戦略特区での新設を提案したことを踏まえ、(1)既存の獣医師養成でない構想(2)ライフサイエンス(生命科学)などの新たに対応すべき分野で具体的な需要(3)既存の大学・学部では対応困難(4)獣医師の需要動向も考慮--を新設の条件とした。文部科学省は獣医師の過剰を防ぐため新設・定員増を認めていなかった。