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余録

「ちはやふる」は…

 「ちはやふる」は和歌の「神」にかかる枕ことばである。最近は競技かるたのまんがのタイトルが思い浮かぶ。落語好きなら花魁(おいらん)の愛想尽かしというご隠居の珍解釈を思い出そう▲昔の人が「ちはやの歌」で思い浮かべたのは虫よけのまじないだった。「ちはやふる卯月(うづき)八日は吉日よ 神さけ虫を成敗(せいばい)ぞする」。この歌を書いた紙を花祭りの日に家の柱に逆さまに貼っておけばアリなどの虫よけになるといわれた▲明治時代に来日した英国人チェンバレンはホテルの部屋に「蟻(あり)一升十六文」というアリよけの札が貼られていたと記す。アリの宿泊費らしく、倹約家のアリはこの値でも入ってこないというのだが……(「世界大博物図鑑」平凡社)▲そんな品のいいまじないが通用する相手ではないらしい。先月、国内で初めて兵庫県で確認された猛毒のヒアリである。その後名古屋、大阪、東京で次々に見つかり、先日は名古屋港からコンテナが運ばれた内陸部の市で発見された▲つまりは貨物とともに国内に運び込まれるケースは以前からかなりあったに違いない。繁殖が確認される前に本格的対策がとれるのは幸運というべきか。環境省は16都道府県22港湾で生息調査を行い、さらに対象地域を広げるという▲国内で繁殖すれば人ばかりか家畜や農作物にも被害を与え、在来種を駆逐して生態系を破壊するとんでもない壊し屋である。ここは長いつき合いのある国内の生き物を守るためにもヒアリを運び込んだ人間が責任を果たさねばならない。

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