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幸せの学び

<その175> 丸刈り余話=城島徹

学生と話す阪本拓人さん

 「僕は丸刈りにしたくない」。30年前、男子生徒の丸刈りを事実上規則化していた神戸市立中学への進学を避けようと、頭髪が自由な国立大付属中を目指して猛勉強する小学6年生がいた。その彼が昨年秋に東大の准教授になったと聞いて授業に出かけた。

     「お久しぶりです」。6月28日夕、ポロシャツにジーンズという軽装で東大駒場キャンパスの教室に現れたのは東大大学院総合文化研究科准教授の阪本拓人さん(41)。国際関係論の授業でアフリカの地図を映すと、滑らかな口調で講義を始めた。

     初めて会ったのは1987年秋。ミナト神戸では「丸刈り」をめぐり「強制は人権侵害」と反発する市民グループが規制撤廃を求めて市議会に陳情書を提出するなど丸刈り論議が沸騰。連載企画で取材した一人が、知人の長男で翌年に受験を控える「拓人君」だった。

     ≪机の上には分厚い問題集が数冊。451ページの算数は薄い方だ。「坊主頭は大嫌い。特に女の子に笑われそうな気がする」。5年生の時に受験を決意。問題集がはかどるにしたがってクラスの男子が相次ぎ頭を丸めていった。「みんながね、“だんだん頭を小さくしていかないと青くなって恥ずかしいぞ”って言うの」。まゆの上で前髪がサラサラと揺れた≫

     記事でこんなふうにかいた拓人君は志望校に無事合格し、丸刈りを免れた。数年後、彼の一家も私も東京へ転居し、家族ぐるみの付き合いは続き、私がアフリカ特派員だった今世紀初頭、偶然にも彼はアフリカの紛争などをテーマに研究者の道を歩み始めていた。

     「現代アフリカの諸課題」と題したこの日の授業テーマは2002年のアフリカ連合(AU)発足の経緯。紛争介入や経済協力を通して貧困と飢餓からの脱却を目指す象徴的な動きで、前々日に送られてきたレジュメを見た私は「これまた奇遇だ」と驚いた。

     というのも私は南アフリカでの国際会議でAUが発足した瞬間に立ち会い、その前年にはザンビアでアフリカ統一機構(OAU)からAUへの移行プロセスを協議する首脳会議を取材していたからだ。その時に撮ったリビアの故カダフィ大佐の写真を返信すると、拓人君はそれを見せながら解説し、マイクを渡された私が取材体験を語るコラボ授業が実現した。

     教室で「阪本先生は若いし、ポイントをわかりやすく教えてくれます」という学生の声を聞き、神戸で問題集をこなしていた拓人君の姿を思い起こし、過ぎた歳月をかみしめた。ところで丸刈りだが、「誰もが行ける公立中で子供の主体性の芽を摘んでしまう」との批判や過度の管理教育への反省もあってか、90年代に頭髪は自由化されたという。【城島徹】

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