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余録

それまで下魚とさげすまれたサンマが…

 それまで下(げ)魚(ざかな)とさげすまれたサンマが広く食べられるようになったのは江戸時代の安永年間だという。知恵者の魚屋がいて年号をもじったのだろう、「安くて長きはさんまなり」と壁に書いて大当たりしたのだ▲好んで食べたのは搗(つ)き米職人ら力仕事の庶民だったという。だがほどなく富裕な層や武家の間にもサンマの味に魅せられる人が現れたのは落語の通りである。「駒とめて値ばかり聞いた初さんま」で駒を止めたのはむろん武家である▲そのころは初物にはかなりの値もついたが、やはり安さが命のサンマだ。房州から大量入荷する秋には売り切るために河岸はお祭り騒ぎとなり、「サンマ騒がせ」という言葉も生まれた。騒ぎの割にはもうけが少ないという含みがある▲こちらのサンマ騒がせは、そのうまさの分かる人が他の国や地域でも増えたためか。きょうからの北太平洋漁業委員会で、政府はサンマの国別漁獲枠を提案する。台湾や中国の漁獲が急増し、日本近海の不漁が続く中の新規制である▲台湾はすでに不漁の日本を上回る漁獲量を記録し、また中国のそれは3年間で20倍となった。日本の不漁は海流の変化も一因だが、誰にとっても乱獲で資源が枯渇(こかつ)しては元も子もない。問題はそれぞれの漁獲枠をめぐる綱引きとなる▲長年の実績をもとにした日本の提案と、消費も漁獲も伸び盛りの国・地域の主張との間のサンマ騒がせである。目ざしてもらいたいのは、サンマの恵みを「安く」「永き」にわたって分かち合える合意だ。

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