メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

祖母を孫の視点で描いた絵本 ベストセラー

認知症の母多香子さん(左)に話しかける楠章子さん。「今は母がいとおしくて仕方ないんです」という=大阪市西淀川区で、三村政司撮影

「ばあばは、だいじょうぶ」 刊行半年で10万部超

 優しかったばあばが「忘れてしまう」病気になって、ぼくは逃げ出した--。認知症になった祖母を孫の男の子の視点で描いた絵本「ばあばは、だいじょうぶ」(童心社、1404円)が幅広い年代の反響を呼び、刊行半年で10万部を超えるベストセラーになっている。自身の体験を元に作品を手がけた作家の楠章子さん(43)=大阪市=は「子ども時代の私のように、大切な人の変化に戸惑っている人に手に取ってほしい」と話す。

     主人公のつばさは、ばあばが大好き。いつも小学校から帰るとばあばの部屋に行く。でもいつしかばあばは、犬に一日に何度もエサをあげたり、枯れ葉入りのお茶を出したり、と少しずつ変わっていく。つばさは、ばあばの部屋をのぞかなくなってしまうが、ある事件をきっかけに気持ちが変わる。

    認知症の祖母を孫の視点で描いた絵本「ばあばは、だいじょうぶ」

     楠さんは、小学生の頃に祖母、20代に入って母多香子さん(79)が若年性認知症になり、孫、娘の立場でそれぞれに向き合ってきた。

     祖母の時は、同じことを繰り返し聞いてくるのが「怖かった」。「さっき聞いたよ」とも言えず、どう答えていいか分からない。何となく関わりづらくなっていた間に、祖母は亡くなった。母にも異変が起きたのが、楠さんが25歳の頃だ。できないことが増えていく母を目の当たりにするのがつらい。隣に住んでいたが、世話を父に任せて、自身は「見て見ぬふりをしていた」という。

     転機は数年後、近所の人から「お母さん、このごろ髪がぼさぼさやん。オシャレな人やったのに」と声をかけられたことだ。それから毎朝、母の髪を結うのが日課になった。大人になってから触れることもなかった母の頭に、くしを入れる。そんなささやかな一歩で「『守ってくれる存在』だった母が『守るべき存在』になった、と気づくスイッチが入った」。作中のつばさの一歩は、ばあばに靴下をはかせることだった。

     物語の山場で、つばさは、ばあばのタンスから、家族の名前や「めいわくばかりで、すみません」「つばさは、やさしい子」などと記されたメモを見つける。楠さんも、祖母の遺品からこうしたメモを見つけ、記憶が失われていく不安や家族への愛情を知った。今、母は要介護5で、小規模多機能型居宅介護事業所に毎日通う。朝晩の介護を父や姉と担うが、母のふと見せる笑顔がいとおしい。

     「ばあば~」は昨年12月の刊行以来、「自分の体験を思い出して感動した」という介護経験者らの反響が相次いでいる。今年の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学低学年の部)にも選ばれた。楠さんは「母は人に頼ること、優しくする気持ちを教えてくれた。物語が、優しさを引き出すきっかけになればうれしい」と語る。

     絵はいしいつとむさんが担当。童心社(03・5976・4181)。【反橋希美】

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 衆院選 投票したら替え玉無料 「一風堂」が「選挙割」
    2. 東急 三軒茶屋駅で停電 田園都市線など一時運転見合わせ
    3. 日産 国内全工場で出荷停止 無資格検査で
    4. 水戸・遺体 不明男性「殴った」肋骨数本折れる
    5. 名大病院 がん兆候、情報共有されず 50代の男性が死亡

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]