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余録

亡くなった平尾昌晃さんが…

 亡くなった平尾昌晃(ひらおまさあき)さんがある時テレビを見ていると、「○は世につれ世は○につれ」の○は何かを若い芸能人らが答えていた。「金」「男」「服」「親」などが飛び出たが、最後まで「歌」はなかった▲最初は驚いた平尾さんだが、様変わりした平成のヒット曲事情を思い浮かべ納得した。年齢にかかわらず誰もが口ずさめるヒット曲がなくなり、時代の記憶を歌で表せなくなって久しい。「歌」と「世」のつながりが失われたのである▲紅白歌合戦の視聴率が80%を超えた年もある昭和後半だった。歌謡曲といわれた「歌」のエネルギーは「世」を巻き込んで沸騰した。ロカビリーの人気歌手から、昭和歌謡を代表する楽曲の作曲家へ。その熱の中心にいた平尾さんだ▲最初の自作曲「ミヨちゃん」も、作曲家として自立した「霧の摩周湖」も、行きあたりばったりにギターをつまびきながらの自己流作曲という。「ぼくらの音楽はスポーツなんだ」。体を張って「かっこよさ」を追い求めた時代だった▲作詞家の山上路夫(やまがみみちお)さんと期日だけをうち合わせ、別々に作詞と作曲をしながら「サビまでピッタンコだった」のが「瀬戸の花嫁」である。奇跡のような合致も、「歌」が個々人を超えて「世」へとつながっていた時代だったからなのか▲「歌は多くの人が声を出して歌ってこそ『歌』だと思う」。「うた先案内人」を名乗り、みんなで歌うコンサートを重ねた晩年だった。送る言葉はタメ口でも許していただけよう。「かっこよかったよ、忘れない」

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