メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

歌舞伎で「見得を切る」というのは…

 歌舞伎で「見得(みえ)を切る」というのは正しい言い方ではないと演劇評論家の渡辺保(わたなべたもつ)さんが書いている。本来は「見得をする」だが、瞬間の激しい力にぴったりな「切る」という語感が一般に受け入れられたようだ▲渡辺さんは見得の3条件を挙げている。体の動きの頂点で静止する「きまり」、鋭い眼光であたりを圧する「にらみ」、体と一体になって高潮する「思い入れ」である(「歌舞伎のことば」大修館書店)▲森友(もりとも)・加計(かけ)問題で「かかわっていたら責任を取る」と言い切った安倍晋三(あべしんぞう)首相の見得で勢いづいた野党の追及だった。首相は「印象操作」「関係なかったら責任を取れるか」と反撃し、内閣支持率の高さまで口に出して見得を切った▲しかしこの見得、証拠となる記録すら示せない「きまり」の悪さである。逆に「にらみ」を利かせたはずの役所からは疑惑の文書や証言が次々に出た。いきおい「思い入れ」は思い上がりではないかと、世上の評判はさんざんだった▲不評が内閣支持率急落に及び、首相も一転、低姿勢で臨んだ衆参委の閉会中審査である。加計問題では「疑惑の目はもっとも」と従来の態度への反省を示す様変わりだった。だが言葉の丁寧(ていねい)さが説明の丁寧さを意味するわけでもない▲大向こうを驚かせたのは、加計学園の獣医学部新設申請を今年1月20日まで知らなかったとの首相の答弁である。以前の答弁と食い違う大見得に野党が色めき立つのは当然だろう。ますます幕引きが遠ざかる「きまらぬ見得」の誤算劇だ。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 安室さんコンサート 療育手帳で入場断られ…「取り返しがつかない」憤りの声
    2. 安室さんコンサート 療育手帳提示で入場できず 返金へ
    3. プロ野球 広島がリーグ3連覇 27年ぶり本拠地で決める
    4. キャバクラ暴行死 未婚10代母、遠い自立 娘残し無念
    5. 内閣改造 待機組約80人、首相支持派閥でパイ奪い合い

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです