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余録

俳人・夏井いつきさんの…

 俳人・夏井(なつい)いつきさんの「絶滅寸前季語辞典」(ちくま文庫)の夏の季語に「コレラ船(せん)」がある。「コレラ」の副題で、船内で感染者が見つかり沖止めになった船をいう▲例句に高浜虚子(たかはまきょし)の「コレラ船いつまで沖に繋(かか)り居る」があるが、そもそもコレラ自体が季語として絶滅寸前だろう。夏井さんは大正から昭和前期の俳人、杉田久女(すぎたひさじょ)の「コレラ怖(お)ぢ蚊帳吊(つ)りて喰(く)ふ昼餉(ひるげ)かな」という光景も紹介している▲コレラよけに蚊帳は今では笑い話だが、家族を守りたいという切実さは笑えない。コレラも絶滅寸前季語となった今日なお、地球上にはこの病魔から身を守るすべのない人々がいる。コレラがつけ入る貧困や災害、そして戦乱である▲内戦の続く中東のイエメンではコレラの感染拡大が止まらない。今年の死者は全土で1800人を超えているという。感染の疑われる人はすでに37万人になり、赤十字国際委員会は年末までに60万人に達するという見通しを発表した▲現地はサウジアラビアが支援する政府軍と、イランの支援を受けるシーア派系武装勢力の内戦が2年も続いている。今では治療も予防も容易なコレラの感染が広がるのは、安全な水と食糧の供給システムや医療制度が崩壊したからだ▲かつて「幸福のアラビア」と呼ばれたイエメンだった。しかし今、ある国際NGOはイエメン内戦による人道危機を「人類にとっての究極の恥」と告発する。いつなりともコレラの恐怖を「絶滅寸前」からよみがえらせる人間の非道と愚行である。

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