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社説

陸自日報問題で稲田氏辞任 文民統制に疑念を招いた

 国の安全保障を担う巨大組織を揺るがす異常な事態である。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊部隊が作成した日報問題をめぐり、稲田朋美防衛相が辞任した。黒江哲郎防衛事務次官も同時に辞任し、陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長も近く辞める。

 防衛省の特別防衛監察の報告書が公表され、「陸自内で廃棄した」とされた日報の電子データは当初から存在し、組織的な隠蔽(いんぺい)が明らかになった。このため関係する「トップ3」がそろって引責を迫られた。

 発端は昨年7月に陸自部隊が活動した首都ジュバでの政府軍と反政府勢力による武力衝突にさかのぼる。

浮き彫りになった隠蔽

 派遣部隊が日々、日本の陸自に送る日報は特定の自衛隊幹部らが閲覧できるネット掲示板に公文書として掲載されている。

 防衛省は衝突直後に派遣部隊と陸自とのやりとりの文書に関する情報公開請求を受理した。

 しかし、陸自は日報を「個人資料」にすり替え、公文書ではないという口実で公開対象から除外した。

 さらに昨年10月に受理した衝突時の日報に関する情報公開請求では、存在する日報を「既に廃棄されている」との理由から非開示とした。

 しかし、非開示決定後の再調査で日報の存在を隠しきれなくなると、「廃棄」とつじつまを合わせるため日報を次々に削除した。

 報告を受けた事務次官らも公開が不要な「個人資料」で処理し、日報の存在を非公表とする判断をした。

 最初の偽装を発端に矛盾しないよう虚偽を重ね、最後は事実を隠すために証拠隠滅をし口裏を合わせた。隠蔽工作と言われても仕方ない。

 最大の焦点はこうした経過に稲田氏が関与したかどうかだった。

 監察の聴取に対し、陸自側は日報の存在を稲田氏に報告し非公表の了承を得たと主張した。しかし、稲田氏はその報告も了承も否定し、食い違いを見せた。

 報告書は稲田氏と陸幕幹部とのやり取りで「陸自の日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できない」と指摘し、疑惑が残る認定となった。

 稲田氏は国会で「報告されなかった」と答弁しており、矛盾が生じる可能性がある。辞任したとはいえ参考人などで国会に対する説明責任を果たすべきだ。

 深刻なのは、日報問題をめぐる一連の混乱を通じて稲田氏の文民統制(シビリアンコントロール)に疑問を抱かせたことだ。

 稲田氏は学校法人「森友学園」との関係についての国会論議で批判の的となり、自衛隊内からは指導力への疑問が強まった。不満は稲田氏の服装に及ぶこともあったという。

 稲田氏は、約23万人の自衛隊に対する統率力があるのか、その資質が問われ続けてきた。辞任は遅すぎたといえよう。

首相人事の責任は重い

 安倍晋三首相は稲田氏を登用した任命責任を認めつつ、自ら事態を収拾しようとしなかった。

 首相が稲田氏に新人のころから注目し、自民党政調会長などに抜てきしたのは、保守的な思想を共有しているためだとされる。

 だが、稲田氏の言動には批判も強い。東京都議選では自民党候補の応援演説で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言したのが問題化し、更迭を求める声すらあった。

 こうした稲田氏を首相はかばい続けた。稲田氏は早くから辞意を首相に伝えていたという。それならば首相が辞任を止めていたことになる。

 首相は憲法9条の改正を唱えている。自衛隊違憲論を封じるために憲法に存在を明文化させたいという。

 しかし、それほど重視する自衛隊なのに、稲田氏を防衛相として送り込んだのは、お気に入りの稲田氏にキャリアを積ませるためだったとみられている。稲田氏の一連の失態は、安倍流改憲論の浅さをも浮き彫りにした。

 今回の監察を受け防衛省は「1年未満」とされる日報の保存期間を「10年」にするなど文書管理の在り方を見直すという。

 「1年未満」の文書では森友学園への国有地売買に関する交渉記録が廃棄され、真相解明の壁になった。

 ずさんな文書管理は政府全体の問題だ。都合の悪い文書が「1年未満」や「個人資料」に分類され、保存や公開の抜け道にならないよう抜本的な見直しが必要だ。

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