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余録

数年前の夏、1人暮らしの70代女性が…

 数年前の夏、1人暮らしの70代女性が自宅のベッドで死亡しているのが見つかった。死後約3日がたち、外傷はなかったが、顕微鏡検査をすると筋肉の細胞の一部が溶けていた。体温の上昇を示す証拠から熱中症による死と判断できた▲しかし、1人住まいの人が亡くなると多くの場合、死因を特定するのは難しい。発見までに長期間かかり、究明の手がかりがほとんど残されていないからだ。西尾元(にしお・はじめ)・兵庫医科大教授の「死体格差」(双葉社(ふたばしゃ))にある▲西尾教授によると、警察に届けのあった異状死体の解剖数は10年前から倍増した。独居者が半数近くを占め、生活保護受給者も約2割いる。孤独、貧困、老いという現代社会が抱える問題の深刻さを痛感する現場である▲老老介護のやり切れない現実も目にする。80代男性が自宅の浴槽で水死した。認知症の妻が湯船から出られなくなり、助けようとして足を滑らせ落ちたらしい。妻は無事だったが、夫の死をどう受け止めただろうか▲貧困による凍死も少なくない。勤め先をリストラされた独居男性は電気、ガス、水道を止められ、遺体発見時は所持金もなく胃と腸は空っぽだった。食事を十分取れずに体力や抵抗力が落ち体温が低下したという▲解剖医と対面するのは犯罪被害者だけでなく、日常生活を営みながら亡くなる人がほとんどだ。2025年には65歳以上の1人暮らしが700万人に達するとみられている。法医学者の経験は、社会からの孤立を防ぐことの大切さを感じさせる。

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