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余録

1900年当時、米ニューヨーク、シカゴ、ボストンには…

 1900年当時、米ニューヨーク、シカゴ、ボストンには2370台の自動車が走っていた。驚くのはその内訳で、1170台が蒸気自動車、800台が電気自動車で、ガソリン車はわずか400台だった▲蒸気や電気は出力の調節が容易で発進や速度変更が簡単だった。だがガソリン車は変速ギアが必要で、機構は複雑、運転も難しかったのだ。なかでも電気自動車は静かさや故障の少なさも群を抜いたが、やはり電池の性能が悪すぎた▲その後の自動車の技術開発は電池や蒸気機関の改良より、複雑なガソリン車へと向かう。以前の小紙連載でその辺の事情を描いた国立科学博物館の鈴木一義(すずき・かずよし)さんは、難問だからこそ挑む技術者のチャレンジ精神ゆえだろうと推測した▲一転、英仏両国が2040年までにガソリン車などの化石燃料自動車の販売を禁止するという現代である。大気汚染対策は前世紀初めには予想もできなかった。自動運転とも相性のいい電気自動車への移行は欧州などで加速しそうだ▲問題は電気自動車で欧州や新興国に後れをとっているとされる日本のメーカーだ。「複雑なガソリン車」で強みを見せるその生産技術だが、部品2万を超える化石燃料車に対し、構造が単純な電気自動車は部品1000の世界という▲多数の複雑な部品による精緻なモノづくりを得意技とする日本メーカーは、標準部品を組み立てるだけの家電製品に似てくる自動車生産の変化を生き抜けるか。欧州や新興国が突きつける難問は解くしかない。

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