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広島・長崎の「原爆の日」 核廃絶への行動を怠るな

 1947年8月6日、焼けつくような日差しの下、浜井信三・広島市長は初の平和宣言を読み上げた。

     恒久平和のためには「恐るべき兵器」(原爆)を廃する「思想革命」が必要だ。「原子力をもって争う世界戦争は、人類の破滅と文明の終末を意味するという真実を、世界の人々に明白に認識せしめた」というのである(浜井著「原爆市長」)。

     敗戦国の一隅から世界に呼びかける緊張感ゆえか、浜井は自分の声が自分のものでないように感じた。

     それから70年、「原爆の日」(広島6日、長崎9日)に際して思う。「思想革命」は進んだだろうか。

     70年代に発効した核拡散防止条約(NPT)は5カ国(米英仏中露)のみに核兵器の保有を認めた。だが、90年代にはインドとパキスタンが核兵器を持つに至り、イスラエルも実質的な核保有国とみられている。

    「唯一の被爆国」として

     それに加えて北朝鮮だ。核・ミサイルの実験を繰り返し、日米への核兵器使用さえほのめかす。その姿は「思想革命」とNPT体制が暗礁に乗り上げたことを物語る。

     そんな折、国連では7月に約120カ国の賛成で核兵器禁止条約が採択されたが、米国など核保有国は反対し、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国や米国の「核の傘」の中にいる日本と韓国も反対した。

     核兵器の保有や使用の禁止はもとより、核によって核をけん制する、伝統的な「核抑止論」に批判的な条約だからだろう。北朝鮮の脅威が高まる折、これでは賛成できないと日本政府は判断したようだ。

     だが、日本は昨年5月、オバマ米大統領を広島に迎え、「核兵器のない世界」への誓いを新たにしたはずだ。米国が核軍拡路線のトランプ政権になったとはいえ、「唯一の被爆国」が核廃絶への弾みにブレーキをかけるのは違和感がある。

     被爆者団体は当然ながら日本政府の対応に不満を表明した。条約交渉会議の参加者から「母国に裏切られ見捨てられたという思いを深めた」(サーロー節子さん)などの声が上がったのも無理はなかった。

     「日本政府はがんじがらめなんですよ」と「平和首長会議」の小溝泰義事務総長は言う。米国からの圧力と北朝鮮の脅威の板挟みになったのに加え、「禁止」を先行させた条約案には、核保有国や同盟国が承服しにくい部分も確かにあった。

     そこで小溝さんは国連での条約案の討議で、核保有国が重視する「検証措置」などを盛り込むよう提案し、核保有国が参加しやすいように努めた。「批判もあるが、条約ができたこと自体が大きな成果。文言も批判しにくい内容です。不参加の国々の勇気ある方針転換を望みたい」

    第二の「思想革命」を

     日本政府は被爆者と米国のはざまで米国を取ったようにも見える。誤解だというなら、日本は核廃絶の意思を行動で明確に示すべきだ。NPTも禁止条約も究極の目標は核廃絶。日本は二つの条約をめぐる国際的な対立をやわらげ、足並みをそろえることに努める。そして禁止条約への対応も再考すべきである。

     北朝鮮の脅威に対して、ある人々は言うかもしれない。「だから核は核でけん制すべきなんだ」と。だが、核兵器がある限り同様の危機は起こりうる。現状での核抑止力は否定せず、核廃絶へ全力を挙げるのが現実的で誠実な態度ではなかろうか。

     私たちは禁止条約が唯一無二の道だとは思わない。だが、同条約に反発する核保有国に問いたい。NPTが定める核軍縮の責務を果たしてきたか。核軍縮が遅々として進まないから非保有国は禁止条約の採択に動いた。問われるべきは核保有国の怠慢と、危機意識の欠如である。

     大阪女学院大学大学院の黒澤満教授は、禁止条約の前文にある「全人類の安全保障」について「個々の国同士の安全保障に加え、国際的で地球規模の安全保障を考える時代になった。そのように発想を転換すべきです」と説く。誤って核を使用する危険性も含めて、第二の「思想革命」が必要な時代になったのだろう。

     「原爆市長」によると、初の平和宣言には連合国軍総司令部のマッカーサー司令官も一文を寄せた。このままだと人類を絶滅させるような手段が戦争で使われるだろう。「広島」は全ての人々への警告だと述べ「警告がないがしろにされないように」と神への祈りで結んでいる。

     「唯一の核兵器使用国」の米国もかみ締めるべき言葉である。

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