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華恵の本と私の物語

/13 夏の朝

 中学ちゅうがくねん夏休なつやすみ、福島ふくしま祖父母そふぼいえいにったときのこと。

     みんなで食事しょくじかけて、はは祖母そぼ会計かいけいをするあいだ、わたしは祖父そふといっしょにみせそとた。

     祖父そふはゆっくりとくるまかってあるした。がっしりしたからだささえる、おおきなあし。だけど、小股こまたで、つっかえそうになりながら一歩一歩踏いっぽいっぽふしている。

     なにはなしていいか、わからない。ちいさいころは、わたしから「おじいちゃん、あそびにいこうよっ」とったものなのに。

     いつからか、祖父そふはときどきおかしなことをうようになった。いきなりそとあに名前なまえぶ。どうしたのかとくと、「そこまでているはずだ。おこられるのがこわくて、いえはいってられずにいるんだ」とう。あにはアメリカにいるのに……いつも、祖父そふ心配しんぱいするのは、あにだ。わたしじゃない。

     わたしは多分たぶん、お利口りこうさんだとおもわれているのだ。全然ぜんぜんそうじゃないのに……。

     そのとき。祖父そふからだが、ガクッとれた。わたしのよこで、ゆっくりたおれていく。

     地面じめんにうずくまる祖父そふを、ものすごいはやさではしってきたははこす。

     「なにしてるの!」

     ははわたしほういてどなった。そのとき、わたしは、無意識むいしきからだいていたのだ。

     祖父そふが、あぁ、とくるしそうにうめいている。あたまかたけたようだ。

     どうしよう……わたしのせいで、おじいちゃんがんだら……どうしよう。

     のどけられ、なにもことばがない。

     夏休なつやすみがわり、学校がっこういそがしくなっていき、わたしが福島ふくしまくのもだんだんすくなくなった。

     祖父そふ病気びょうきがゆっくりすすみ、数年後すうねんごなつに、病院びょういんしずかにくなった。

      + + + +

     『なつあさ』は、莉子りこのおじいちゃんの一周忌いっしゅうき法要ほうようから、物語ものがたりはじまります。莉子りこは、おかあさんの実家じっか法要ほうようえ、一泊いっぱくします。翌朝よくあさにわてみると、不思議ふしぎなことがこります。きているおじいちゃんがそこにいたのです。つぎあさは、わかくなったおじいちゃんと、少女しょうじょのおかあさんにもいます。がたつごとに、どんどんおじいちゃんは若返わかがえり、いえすこしずつむかしかたちになっていきます。そして莉子りこは、いまにつながる家族かぞく物語ものがたりるのです。

     もしもいま、わたしが祖父そふえたら。いまのわたしくらいの年齢ねんれい祖父そふにもえたとしたら。

     「ごめんなさい」といたい。「ありがとう」もつたえたい。そして、とにかくはなしがしたい。

     おぼんむかえ、おもいます。

     えないはずのひとに、もしも、どこかでえたら、いいですね。


    なつあさ

    本田昌子ほんだまさこちょ 木村彩子きむらさいこ

    福音館書店ふくいんかんしょてん 1836えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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