メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

 中学ちゅうがくねん夏休なつやすみ、福島ふくしま祖父母そふぼいえいにったときのこと。

     みんなで食事しょくじかけて、はは祖母そぼ会計かいけいをするあいだ、わたしは祖父そふといっしょにみせそとた。

     祖父そふはゆっくりとくるまかってあるした。がっしりしたからだささえる、おおきなあし。だけど、小股こまたで、つっかえそうになりながら一歩一歩踏いっぽいっぽふしている。

     なにはなしていいか、わからない。ちいさいころは、わたしから「おじいちゃん、あそびにいこうよっ」とったものなのに。

     いつからか、祖父そふはときどきおかしなことをうようになった。いきなりそとあに名前なまえぶ。どうしたのかとくと、「そこまでているはずだ。おこられるのがこわくて、いえはいってられずにいるんだ」とう。あにはアメリカにいるのに……いつも、祖父そふ心配しんぱいするのは、あにだ。わたしじゃない。

     わたしは多分たぶん、お利口りこうさんだとおもわれているのだ。全然ぜんぜんそうじゃないのに……。

     そのとき。祖父そふからだが、ガクッとれた。わたしのよこで、ゆっくりたおれていく。

     地面じめんにうずくまる祖父そふを、ものすごいはやさではしってきたははこす。

     「なにしてるの!」

     ははわたしほういてどなった。そのとき、わたしは、無意識むいしきからだいていたのだ。

     祖父そふが、あぁ、とくるしそうにうめいている。あたまかたけたようだ。

     どうしよう……わたしのせいで、おじいちゃんがんだら……どうしよう。

     のどけられ、なにもことばがない。

     夏休なつやすみがわり、学校がっこういそがしくなっていき、わたしが福島ふくしまくのもだんだんすくなくなった。

     祖父そふ病気びょうきがゆっくりすすみ、数年後すうねんごなつに、病院びょういんしずかにくなった。

      + + + +

     『なつあさ』は、莉子りこのおじいちゃんの一周忌いっしゅうき法要ほうようから、物語ものがたりはじまります。莉子りこは、おかあさんの実家じっか法要ほうようえ、一泊いっぱくします。翌朝よくあさにわてみると、不思議ふしぎなことがこります。きているおじいちゃんがそこにいたのです。つぎあさは、わかくなったおじいちゃんと、少女しょうじょのおかあさんにもいます。がたつごとに、どんどんおじいちゃんは若返わかがえり、いえすこしずつむかしかたちになっていきます。そして莉子りこは、いまにつながる家族かぞく物語ものがたりるのです。

     もしもいま、わたしが祖父そふえたら。いまのわたしくらいの年齢ねんれい祖父そふにもえたとしたら。

     「ごめんなさい」といたい。「ありがとう」もつたえたい。そして、とにかくはなしがしたい。

     おぼんむかえ、おもいます。

     えないはずのひとに、もしも、どこかでえたら、いいですね。


    なつあさ

    本田昌子ほんだまさこちょ 木村彩子きむらさいこ

    福音館書店ふくいんかんしょてん 1836えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 特集ワイド 「ゲッベルスと私」 全体主義描いた映画、続々公開 同じ過ちを犯さぬために
    2. 大阪震度6弱 市長、ツイッターで「全校休校」 現場混乱
    3. 介護 職員へのセクハラや暴力が深刻 上司に訴えても「あんたが悪い」
    4. ロシアW杯 日本女性に下品な言葉 コロンビアで問題に
    5. 堺・男性殺害 逮捕の姉、事件前に「練炭自殺」検索

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]