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社説

増え続ける児童虐待 市町村の役割より大きく

 2016年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待件数は12万2578件(速報値)で、前年度から約2万件増えた。最近は毎年2ケタの伸び率を示しており、この4年で2倍近くに増えたことになる。

     全体の52%は心理的虐待だ。

     警察庁は昨年、事実関係が明らかでなくても虐待が疑われる場合は児相に通告する方針を出した。夫婦間の家庭内暴力を警察が把握した際、それを目撃した子どもが心理的虐待を受けていると判断して通告するケースが増えているという。

     「子どもの泣き声がよくする」などという近隣の人からの通告も多くなった。

     小さな兆しに気づき、子どもの救済や、孤立している親の支援につなげることは大事だ。その意味では児相への通告件数が増えることは必ずしも悪くはない。

     ただ、通告が増えると児相職員の負担が重くなり、本当に緊急対応が必要な事案に手が回らなくなる恐れがある。対応が遅れて子どもを救えなかったケースが相次いだことから、児相は通告を受けると原則48時間以内に家庭訪問をして子どもの安全を確認することが運営指針で定められているのだ。

     昨年の児童福祉法改正で、市町村に妊娠期から子育て期までの支援をする「子育て世代包括支援センター」設置の努力義務を定めた。さらに、軽微な虐待事案は児相から市町村に対応を委ねられるようになった。児相の負担を軽減し、重要案件に集中できるようにするためだ。

     もともと市町村は乳幼児健診や新生児訪問などの母子保健事業などを行っており、虐待リスクの高い家庭を把握しやすい立場にある。子どもの支援をしている民間団体とも協力関係を作りやすい利点がある。

     小さな町村には都道府県の支援が必要だ。埼玉県は福祉施設職員の虐待防止研修の義務化、市町村と連携しての体制強化などを盛り込んだ条例を作った。組織の壁を越える取り組みを各地で進めるべきだ。

     昨年度までの10年間で児相で働く児童福祉司の数は1・4倍に増えたが、虐待の対応件数は3・3倍に増えている。市町村の機能強化を急ぎ、増え続ける虐待に対応できる体制を整えるべきだ。

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