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第1回 私の人生を変えた“一期一会”という言葉=段文凝

 “一期一会”--。これは私が日本に来て初めて知った四字熟語です。中国には、この一期一会にそのまま当てはまる言葉がありません。最初にこの言葉を知った時、私は「とても日本らしい言葉だな」と感じました。

     辞書によると、一期一会は一生に一度しか出会わない、という意味で、もともとは茶道の言葉だったそうです。お茶の席はその日、その場限りのもの。お茶を立てた相手には、その後の人生で再び会うことはないのかもしれない。だからこそ、いま目の前にいる相手を精いっぱいの気持ちでもてなしましょう、という考え方です。

     大げさかもしれませんが、私はこの言葉を知って人生が変わりました。いま、私の友人や知人に言っても100%信じてもらえませんが、中国にいた頃の私は引っ込み思案で、消極的でした。友達がなかなかできず悩んだ時期もあったのです。しかし来日して、この一期一会という言葉を知ってからは、人との出会いや、新しい事へのチャレンジをためらわず、むしろ楽しめるようにさえなりました。

    日本への興味をかき立てた父の話

     私が日本に興味を持ったのは父の影響です。父は日本で働いたことがあり、昔からよく日本に関する話が家族だんらんの話題に上りました。特に、和食についての話は印象深かったです。私の故郷・天津は、北京から高速鉄道で30分ほどの場所にある港町です。新鮮な魚介類が毎日漁船で運ばれてきます。私の好物はエビやカニや貝。特に、蒸したての蝦蛄(しゃこ)には目がありません。そんな食いしん坊の私なので、父から日本の刺し身やおすしの話を聞いて、幼心に「どんな味なんだろう」と思っていました。また日本のアニメ作品も好きでした。中でも「名探偵コナン」は、大人になった今でも、毎年劇場版アニメを映画館に見に行っているほどのお気に入りです。

    日本に来たばかりのとき渋谷の109に行って来ましたっ! 渋谷や新宿は人が 多く駅が複雑だったのですが、今ではすっかり慣れました。

    ついに日本へ!私の失敗と成長

     大学を卒業して、天津でアナウンサーの仕事を始めた後も、日本への思いはますます募り、ついに仕事を辞めて日本に行く決心をしました。一度決めると私はすぐに行動するタイプ。早速日本に引っ越すと、日本語学校に入学しました。日本では初めてのアルバイトも経験しました。失敗もありました。レストランの厨房(ちゅうぼう)で働いていたとき、お皿の洗い方を先輩に注意され、よく聞き取れなかった私は、無意識に「啊(アー)?」と聞き返したのです。これは中国語で「何ですか?」という程の意味なのですが、日本で先輩に「啊(アー)?」と言ってしまったら……どうなるか、日本人の皆さんならご存じですよね。その先輩は私をにらみ付けながら、烈火のごとく私を叱りました。日本では、これは「ケンカを売っている」という意味になるということを、後になって別の日本人の友人に教えてもらいました。

     うれしいことや楽しいこともたくさんありました。その一つがNHKの語学番組「テレビで中国語」に出演できたことです。番組への出演が決まったおかげで、さまざまな貴重な経験を積むことができ、素敵な出会いにも恵まれました。きっと、あなたもこの番組を通じて私を知ってくださったのではないでしょうか。その後、エッセーや中国語の教科書など、本を書く機会もいただきました。今年に入ってからは、舞台で主役を務めることもできました。

    いま私があなたに伝えたいこと

     いま、私の母国である中国は世界第2位の経済大国となり、日本にも大勢の観光客が訪れるようになりました。だからこそ、もっとお互いを知ってほしい、というのが私の素直な気持ちです。私が日本に来たばかりの頃、無意識に言ってしまった一言でアルバイト先の先輩を怒らせてしまったように、中国人旅行者には、まったく悪気がなくても、日本人に不快な思いをさせてしまうことがあると思います。「爆買い」や「マナーの悪さ」など中国人の負のイメージが、実は誤解や、お互いの国の文化・風習に対する理解の不足から生み出されていることも多いと感じます。

     今週から2週間に1回のペースで更新していくこの連載で、私は、ありのままの中国人の気持ちや暮らしぶりをあなたにご紹介していきたいと思います。日本で出会った言葉“一期一会”が私を変えてくれたように、私を含めた中国人との出会いが、あなたにとっても、すてきな“一期一会”となりますように。

     日中国交正常化45周年となる今年、私、段文凝は舞台や講演会、そして今日から始まるこの連載など、さまざまな新しい取り組みにチャレンジしています。日本に暮らす一人の中国人として、私自身が見聞きし、味わい、触れあい、感じた、ふるさと中国と私の大好きな日本の魅力を、直接あなたにお伝えしていきます。

     ぜひ、これからも応援をよろしくお願い致します。また、連載の感想もたくさんお寄せくださいね。では、次回もどうぞお楽しみに!

    「中華テーブル」の発祥といわれているホテル雅叙園東京に浴衣を着て遊びに来ました。壁や天井の装飾もすごくきれいでした!

    段文凝

    (だん・ぶんぎょう)中国・天津市出身。2009年5月来日。同年まで天津テレビ局に所属。2011年4月より、NHK教育テレビ『テレビで中国語』にレギュラー出演。(2017年3月卒業)2014年早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース卒業。日中間を行き来し講演活動を行い、「かわいすぎる中国語講師」として幅広い層に人気を得ている。2015年、2016年に毎日新聞夕刊「ひ・と・も・よ・う」で取り上げられた。2017年現在、NHKWORLDのラジオにレギュラー出演。舞台や映画などを中心に女優としても活躍している。

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