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第1回 なぜいま「おひとりファースト」なのか?=マーケティングライター・牛窪恵

 あなたの周りにも、きっといる。40、50代の独身女性、「ミドルおひとり女子」。彼女たちはあなたの目に、どのように映っているだろうか。

     ……結婚しそびれた、不運な女性? あるいは「『彼氏いない歴』も長そうだし、土日はさぞや寂しいんじゃないかな」。でもその割には、「毎日なんだか楽しそうだけど、何に熱中しているのか、ナゾだな」など……?

     初めに申し上げておこう。日本は2030年、全人口の約半数が「おひとり様(独身)」になる(【図1】野村総合研究所予測)。おひとり様はレアケースどころか、「2人に1人」「ごく当たり前」の時代が、すぐそこまで迫っているのは事実で、日本は国として、この現実を無視するわけにはいかない。ただ裏を返せば、企業にとっては計り知れないほどのビジネスチャンス。少子高齢化社会にあって、新たなマーケットの可能性を切りひらく存在、それが「ミドルおひとり女子」なのだ。

    図1=2030年の配偶関係別人口予測(野村総研の資料から)

     なぜ彼女たちが、有望なターゲットなのか。理由はおもに三つある。

    1.消費好きなバブル世代(40代半ば~50代半ば)が含まれるから

    2.人口ボリュームの団塊ジュニア(現40代前半~半ば)が含まれるから

    3.いまも「根拠なき自信」と上昇志向をもち、若さや自分磨きを追求しているから

     3は後の連載でふれるとして、ここでは1、2について説明しよう。

     まず1、バブル世代といえば、バブル予兆期と最盛期に青春時代を過ごした世代。右肩上がりの経済やお嬢様ブーム、女子大生ブームに支えられ、高級ブランドやファッション、ドライブ、リゾート&グルメなどに積極的に消費した。若い世代と違い、消費に対する罪悪感は弱い。いまだに「宵越しのお金は持たない主義なの」などと言い切るおひとり女子もいるほどだ。

     2の団塊ジュニアは、別名「貧乏クジ世代」。人数が多く、子ども時代から競争にさらされてきたうえ、「もう少しで大人になれる」「いい思いができる」と感じていたところでバブルがはじけ、1993年に初の「就職氷河期」にあたった。男性も不況で「これでは妻子を養えない」と自信をなくし、未婚化が顕著になった世代でもある。

     ちなみに40代女性の未婚率は、約25年前の1990年時点では、わずか5.2%だった。ところがいま(2015年)は17.2%と3倍以上に増大。しかも元来人数が多い団塊ジュニアが含まれるので、40代女性の未婚人口は約913万人中の17.2%、およそ160万人にのぼる。これ以外に、バツイチ、バツニなど離別・死別の独身女性を加えると、40代のミドルおひとり様だけでも、250万人弱(同年代女性 人口の3割弱)になるのだ(国勢調査)。

    ミドルおひとり女子が、日本を変える!

     私が、初の著書「男が知らない『おひとりさま』マーケット」(日本経済新聞出版社)を書いたのが、2004年4月。ジャーナリストの故・岩下久美子さんが初めて提唱した「おひとりさま」という概念を、企業や市場にも広めたいとの思いで書いた。おかげさまで翌05年、同著は新語・流行語大賞に最終ノミネートされ、世のトレンドキーワードにもなった。

     その後07年、社会学者の上野千鶴子さんが書いた「おひとりさまの老後」(法研)が大ベストセラーに。社会には「そういえば、周りに独身女性が随分増えたな」との認識や、「そうか、結婚しても、最期はおひとりさまになるかもしれないんだ」などの気づきが一気に広がった、とも言えるだろう。

     あれから10年。当の独身女性は、果たして「すっかり市民権を得た」と言えるだろうか。

     残念ながら、そうとも言えない。国の社会保障制度は、相変わらず結婚(入籍)した「家族」の単位を優遇し、08年の婚活ブーム以降は、「未婚でいるのは、本人の努力が足りないからだ」との見方も、復活した感がある。

     いまも昔も、18~34歳の時点では「いつかは結婚したい」と答える女性が9割前後いる。1987年の時点で92.9%、2015年時点でも89.3%とほとんど変わらない(2016年 国立社会保障・人口問題研究所)。

     一方で、未婚女性が増え続けているのは、周知のとおり。30代で28.5%と4人に1人以上、40代でも17.2%と6人に1人を超える。さらに「一生に一度も結婚しないであろう」とされる「生涯未婚率」は、いまや女性でも14.06%とおよそ7人に1人にのぼるのだ(【図2】16年 厚生労働省)。

    図2=生涯未婚率の推移(平成28年版厚生労働白書から)

     ただし、多くの人が疑問に思っているだろう。そもそも、50歳の時点で結婚していない人たちを指して「生涯未婚」と呼んでいいのか、と。

     このところ新聞や雑誌をにぎわせているとおり、いま50歳前後の「アラフィフ婚活」が熱い。私もこの半年間に、アラフィフ婚を果たした女性を5人取材した。中には「なぜそこまでして婚活を?!」と驚くべき女性もいて、つくづく「ミドルおひとり女子」の情熱とパワーを実感したのだ。これも、10年以上前には考えられなかった事象であり、新たなマーケットの一つだろう。

     間違いない。彼女たちは低迷する日本経済に、まだ見ぬ景色を見せてくれる。同時に「何が幸せなのか」という大きな課題に、新たな気づきと発見をくれるだろう。そして、彼女たちを貴重な存在としてとらえる「おひとりファースト」の視点こそが、この国に、多様な市場と希望に満ちた未来をもたらしてくれるに違いないのだ。

     次回はまず、アラフィフ婚活の現状と市場可能性、そしてミドルおひとり女子のホンネに迫りたい。

    牛窪恵

    世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)通学中。 オフィシャルブログ:アメーバ公式ブログ「牛窪恵の「気分はバブリ~♪」」(http://ameblo.jp/megumi-ushikubo/
    財務省 財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターほか、官庁関係の要職多数。
    1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。
    トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。テレビコメンテーターとしても活躍中。
    【代表作】
    『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)
    『独身王子に聞け!』(日本経済新聞社)
    『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)
    『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)
    『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
    『「男損(だんそん)」の時代』(潮出版社)ほか多数

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