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余録

子どもが神隠しにあった時…

 子どもが神隠しにあった時、そのへその緒を拝めばすぐに見つかる。昔はそんな俗信があった。赤ちゃんのへその緒を大切に保管する日本の習慣は世界的には珍しいらしい▲子どもが大病した時はへその緒を煎(せん)じて飲ませ、治癒を祈ったという。子どもの命が簡単に病に奪い去られた昔、子に生を授けたへその緒の霊力に救いを求めた親心である。へその緒は子どもをこの世につなぎとめるよすがとなった▲そんなへその緒の力が新たな医学的知見によって見直される今日である。さい帯血、つまり出産直後のへその緒から採った血にはさまざまな細胞の元となる幹細胞(かんさいぼう)が多く含まれ、白血病治療はじめ再生医療への応用が期待されている▲だが親が子や親族の大病に備えて残したさい帯血は、いつしか闇に消えていった。それが次に世に現れた時は若返りやどんながんも治すという妙薬に化け、途方もない値で投与されていた。摘発されたさい帯血の違法投与のてん末だ▲破産した民間さい帯血バンクで保管していた血液を転売し、億単位の利益を出していた闇ビジネスである。むろん老化防止やがん治療効果については十分な医学的根拠はない。感染などのリスクを考えれば、安全性にも疑問符がつく▲「古里や臍(へそ)の緒に泣く年の暮れ」。兄が持っていた自分のへその緒を見た芭蕉(ばしょう)は亡き父母をしのんで泣いた。子と親を結び、新たな命をこの世に宿したへその緒の霊力が、札束を数える手から手へと受け渡されるさまを思い浮かべれば情けない。

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