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社説

さい帯血の無届け投与 野放しが生んだ悪質商法

 医療行為とは到底言えない。

     出産時のへその緒にあるさい帯血を、がん治療や美容の名目で、無届けで患者に投与していたとして医師や民間業者が警察に逮捕された。

     さい帯血は血液をつくる幹細胞を含む。白血病などの治療で国内で1万例以上の移植が行われてきたが、それ以外のがん患者や美容に効く医学的な根拠は確認されていない。

     今回のさい帯血は、2009年に破綻した民間バンクから流出したものだ。破産手続きの過程で、逮捕されたさい帯血保管販売会社の社長が千数百人分を入手した。ブローカーを経由して全国のクリニックに流れ、無届け投与は約100人に上る。

     投与された患者は1回300万円から400万円を支払っていた。それを会社社長やブローカー、クリニック側が山分けしていた構図だ。

     金もうけのため、患者の期待につけ込んだ悪質商法の疑いが強い。さい帯血の保管状況も悪く患者を感染症の危険にさらした可能性もある。

     民間バンクのさい帯血は、主に子どもが将来病気になった時に備えるもので、提供者の信頼も裏切った。

     再生医療安全性確保法による摘発は初めてだ。安全性などの検証が不十分な医療行為が、再生医療と称して自由診療で実施されていたことに歯止めをかけるため制定され、14年に施行された。再生医療を危険性の順に3区分し、治療計画を国に届け出ることを医師に義務づけた。

     厚生労働省は5~6月、さい帯血の無届け投与をしたとして、12の民間クリニックの治療を一時停止させた。業者側の助言でカルテの改ざんが行われていた疑惑も出ている。

     巨額の利益に直結するさい帯血事業に民間人が目をつけた事件の背景を踏まえれば、民間バンクの規制そのものが課題になる。

     妊婦が無償提供するさい帯血を保存する公的バンクの事業は許可制で、厳重な品質管理が義務づけられる。一方、民間バンクは事実上、野放し状態になってきた。

     厚労省は民間バンクの実態調査を始めたが、許可制などによる監視強化に直ちに取り組むべきだ。

     さい帯血以外の幹細胞についても悪用の懸念はないだろうか。こうした行為を放置すれば、再生医療への信頼にも影響を及ぼしかねない。

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