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余録

<くろがねの秋の風鈴鳴りにけり…

 <くろがねの秋の風鈴鳴りにけり>(飯田蛇笏(だこつ))。そろそろ片付けたほうがいいかもしれない。騒音と感じる人もいるからだ。近所の風鈴の音が気になり、風の強い日や夜には取り外してもらうよう頼んだ--そんな新聞の投書を読んだ▲風鈴ばかりではない。火の用心を呼びかける拍子木の音にも苦情が寄せられる。地域を火事から守るボランティア活動が一部の人には耳に障る。何とも難しい時代になった▲特に深刻なのは幼稚園や保育園へのクレームだ。東京都武蔵野市は来年4月に開園予定だった認可保育園について、近隣住民の理解が得られなかったとして開園を延期した。保育園が「迷惑施設」のように受け止められる現実をどう考えればいいのか▲脚本家の山田太一さんに「家族の音」というエッセーがある。かつてはどこの家もこんな感じだった。「家族はクシャミでありイビキであり、急に意味不明の高い声を出した妻の内面であり、夫の沈黙であり、目がはなせない赤ん坊の笑い声泣き声であり……」▲核家族化や少子化が進み、生活の中で聞こえる音は昔よりむしろ静かになったように思える。だから余計に音に敏感なのかもしれない。隣近所の音をめぐり、お互いさまでは済まなくなった。ではどうすればという知恵も浮かばない▲そういえば、除夜の鐘にまで苦情が寄せられ、昼間に鳴らすことにした寺もある。人の心や暮らしのありようが、音の響きを変えていく。その現実を前に、耳を塞ぐことはもはやできない。

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