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SUNDAY LIBRARY 岡崎 武志・評『サザンオールスターズ』『大阪ソースダイバー』ほか

今週の新刊

◆『サザンオールスターズ 1978-1985』スージー鈴木・著(新潮新書/税別800円)

 いまNHK朝ドラ「ひよっこ」で毎朝、桑田佳祐の歌声で目が覚める。久々の「紅白歌合戦」出場も視野に入ってきた。しかし、最初期のコミックバンド扱いから、長年君臨するトップの座を考えると、ファンには感慨がある。

 スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』は、初期の名曲を徹底分析し、神髄を解き明かす音楽論。デビュー作「勝手にシンドバッド」は、タイトルがヒット曲2作の合成、独特な「桑田語」と賑(にぎ)やかさの向こうにある、楽しくてワクワクする「ポップの絆」の存在を見逃さない。

 著者の強みは自身でギターを弾き、音楽がよくわかることで、印象批評ではなく、コード展開やバックの演奏など、サザンの独自性を実証的に解析している。全曲を五つ星で採点し、批評する徹底ぶりにも頭が下がる。

 66年生まれが、サザンとともに歩んだ。青春の思い出がつねにシンクロする。甘酸っぱくも熱い、初期サザン論の決定版だ。

◆『大阪ソースダイバー』堀埜浩二・曽束政昭/著(ブリコルール・パブリッシング/税別1500円)

 大阪人としては、表紙の全面茶色のビジュアルに、まずは手が出てしまう。堀埜浩二・曽束政昭『大阪ソースダイバー』は大阪を主に神戸・京都も巻き込み、お好み焼きと串カツの名店巡りをしつつ、まるでソースの海を泳ぐ奇書。

 著者二人ともが大阪育ち。天ぷらや冷や奴(やっこ)もソースがけ。「『ドバッとかければ、たちまちに贅沢でおいしいものになってしまう』という魔法の調味料」と豪語する環境で食生活を送ってきた。あな、恐ろしや。血圧上がりそう。

 道頓堀「美津の」は豚ミンチ、千日前「おかる」はマヨネーズでアートと、名店の特徴を示しつつ、いかなるソースかを追求していく。「ヒロタソース」のたまり系激辛、難波「はつせ」の辛めウスターソースが美味(うま)そう! 大将、生ビールお代わりお願い。

 「イカリソース」の工場訪問は、大阪人の舌を席巻してきた老舗の「強み」がわかる。トマトをベースに「隙(すき)がないバランス味」という表現への思い入れを見よ。

◆『深海の寓話』森村誠一・著(角川書店/税別1600円)

 社会での役目を終えた男たちがいる。ノンキャリアで刑事一筋の人生を過ごした鯨井は、山手線内で男たちに取り囲まれた若い女性を救う。その背後には、政財界の黒い陰謀が渦巻いていた。森村誠一『深海の寓話』は、鯨井はじめ6人の仲間が、巨大権力の壁に挑んでいく物語。彼らは、先祖が忍者の商社マン、元スタントマン、元戦場カメラマンなど、各々に得た知識と技術があった。それが武器となるというのが小気味よい。最後に勝つのは信念と愛であるというテーマが、読者を勇気づける。

◆『タマネギのひみつ。』黒柳徹子、糸井重里・著(祥伝社黄金文庫/税別590円)

「徹子の部屋」で、人の話を引き出す名人の黒柳徹子。じつは自分のことを語り出すと止まらない。糸井重里を聞き手に語り尽くした談話が『タマネギのひみつ。』。あのヘアスタイルの秘密、「徹子の部屋」で着る衣装、息継ぎが上手だから長く喋(しゃべ)れる、ピカピカしたものが好きと、およそ脈絡なく飛び出る話題が、じつに楽しく新鮮である。糸井は、黒柳は「おもしろ案内人」であり、「好奇心」が尊いものだと知った、と言う。読者はこれまで、黒柳徹子のことをあまり知らなかったと知るのだ。

◆『観応の擾乱』亀田俊和・著(中公新書/税別860円)

 室町幕府の発足、続く南北朝の動乱と、中世のこの100年は、日本史でも面白いところ。足利尊氏と高師直(こうのもろなお)、後醍醐天皇、足利義満というスターもいる。しかし亀田俊和(としたか)が主軸に据えるのは『観応(かんのう)の擾乱(じょうらん)』という、やや耳慣れない内乱。室町幕府を二分した足利尊氏・直義(ただよし)の兄弟対決は、やがて全国規模に発展していく。前代の「体制が変化し、室町幕府独自の権力構造が生み出される契機となった」と著者は言う。この骨肉の政治・権力闘争から、現代日本は何を学ぶべきかが問われる。

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岡崎武志(おかざき・たけし)

 1957年、大阪府生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。主な著書に『上京する文學』『読書の腕前』『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』など

<サンデー毎日 2017年9月17日号より>

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