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電話の向こうの風の音が強くなった。雅也(まさや)さんが言う。
「今日帰る予定だったんだけど、台風が近づいてて、飛行機が欠航しちゃってね。今度の台風はかなり大きいみたいだよ。そっちはまだだいじょうぶ?」
窓の外で木々の梢(こずえ)がざわりと鳴った。
“台風は勢力を強めて北上し、夜半過ぎには上陸する模様。暴風や高波にはじゅうぶんな警戒が必要です”
腰のベルトに吊(つ)るしたラジオから新しい台風情報が流れてきた。時刻は午後一時。すぐそこに植わった夏蜜柑(みかん)やレモンの木の繁り葉が、ざわざわと不吉な音を立てて揺れはじめている。恵介(けいすけ)は昨日から10000株の苺(いちご)を守るための防衛対策に追われていた。
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